第10話 幕間・野望の真相
「ちっ、エルセとジェニの二人は未だに捕まらずか……忌々しい! 早く捕まえて処刑しなければ、逆恨みで何をされるか分からない……」
俺は未だに来ない朗報にイライラしていた。
ようやくここまで来たのだ。早く不安の芽は摘まなければならない。
「うふふ、そうねぇ。でも、もう少しよ。あの下等なゴミ二匹を葬ればこの国は私とあなたのものなのだから」
「そうだな。ようやくここまで来たのだ……」
まもなく俺の妻となる第一王女のトワレットが俺にしなだれかかって身体を弄ってくる。
俺はその手を受け入れながら、トワレットの腰に手を伸ばす。
相変わらずたまらない身体だ。この身体とトワレットの心を我が物にし、全ては順風満帆に進むはずだったんだ。
王位継承権の第一位であるトワレットと結ばれ、公爵家の俺が晴れてこの国の王となる予定だった。
しかし、テラの台頭によって予定が狂った。
八勇将になったテラを愚民共は称えた。それどころか、テラが第三王女のシス姫と恋仲となったとき、国民や兵たちの中には「テラを国王に」と推す声が多数あった。
ふざけるなと思った。
王家は常に高貴な血でなければならない。
それを不浄の下級国民の血を引き入れるだけでなく、国王にしようなどあってはならない。
トワレットも俺と同じ気持ちだった。
第三王女であるシス姫に女王の座を奪われるなど、プライドの高いトワレットには何事にも耐えがたい苦痛だった。
しかし、八勇将となって戦果を上げるテラの名はあっという間に世界に轟いた。おまけに、奴の弟妹達も才があるということで注目を浴び、近い将来本当にテラが国王に、そしてその周囲を弟たちが固めるという悪夢の未来が現実になろうとしていた。
おまけにテラの弟であるエルセは、俺が国王になった暁には側室にしようとしていた乙女たちに慕われて手籠めにしようとしていた。
商会長の娘で王都でもその評判の美人双子姉妹。気が強いが明るく太陽のような少女アルナと、クールで清廉なヴァジナ。
そして騎士団長の娘で孤高なところがそそられる、未来の気高き女騎士、ストレイヤ。
全員、国でも評判のたまらない容姿で、是非ともその裸体を俺が独り占めしたいと思っていた。
それなのに、三人があの下級国民の愚弟に唾つけられようなど、あってはならない。
この国も、国王の座も、そしてあの娘たちも全員俺のモノだ。
そんな時だった。
俺たちに『あの話』がもたらされたのは。
――人類の盟主であるガティクーン帝国が誇る、『八勇将・ゲウロ様』……それはどういうことでしょうか?
――言った通り。これは、皇帝陛下からの密命でもある。
それは、自他ともに認める人類最大最強国家である帝国の皇帝と八勇将からもたらされた話であった。
――近いうちに行われる、テラ率いる軍と魔王軍のキハク軍の戦……そこで、テラを罠に嵌めてテラを消そうと思っている……。戦のドサクサに紛れ、テラの側近の将校たちを一通り暗殺し、軍の機能を殺して混乱させる。さすれば、仮にテラがキハクに討たれなくても、軍の大敗は目に見える。もしテラが生きて帰ったら、王国はその責をテラに取らせて打ち首にせよ
――な、なぜ?! お、同じ八勇将様が……そ、それに、帝国がそのようなことを……
――テラの存在が人類連合にとって非常に危険となったからだ。あの男は、よりにもよって魔王軍側と停戦の交渉を水面下で進めようとしていた。更に奴の反戦に対する思想が徐々に各国に広がり始めようとしていた。その前に奴を消さねばならない。
――そ、そんな……し、しかし……そ、そうなれば、我が国にも多大な損害が……
――安心せよ。どのような結果になろうとも、帝国が犠牲者の家族や経済含めて全面的に支援を約束する。更に、空席となる八勇将も即座にクンターレ王国の者を推すこともだ。テラがいなくなれば、次期国王候補間違いないそなたとトワレット王女の力があればうまくいくであろう。
俺がテラを忌々しいと思っていたのと同じぐらい、どうやらテラは連合内部でもよく思われていないということが分かった。
――今更、魔王軍や魔族、そして魔界と和睦などありえぬ。魔族は全て皆殺しに。根絶やしにしなければならぬ。それこそが正義であり、その正義の下に結束したのが人類連合軍。しかし、その結束を内側から崩壊させようとする反人類的思想の平民出身の英雄は、ただの危険でしかない
俺とトワレットにとっては願ったりなことだった。
そして、国王陛下も俺たちの話に乗った。陛下も元々ご自身よりも遥かに国民の人気が高く、愚民共から早々に退位して王の座をテラに渡せなどという声も多かったことから、テラのことも忌々しいと思っていたようだ、
更には妻妾の娘であったシス姫が女王になることも乗り気ではなかった。
陛下は姫たちの中で最もトワレットを可愛がっていたので、何としてもトワレットに女王の座についてほしいと思っていたことは本当に幸運だった。
「うふふふ、それにしても下級国民たちは本当にバカよねえ。あれだけテラを市民の英雄だの何だのと持ち上げていたのに、私たちが放った扇動員たちにまんまと乗せられているのだから」
「まぁ、青年、若い娘、年寄りなど、だいぶ雇ったけどなぁ。だが、愚民たちなどは自分以外の多数が右向けば右向く愚か者たち……実際に家族が死んだ者たちも加われば、容易いことだったよ。それに、あの騒ぎでシス姫まで勝手に死んでくれたのは本当に幸運だった」
「ええ。私たちの手を汚さずにバカな愚民共のおかげで……ふふふ、やはり天は私とあなたにこの国を統べろと言っているのねぇ」
正直、本来の作戦であれば、『テラが生きて帰ってきたら、敗戦の責で処刑』、『テラが戦死したら、英雄として称えてその死から逆に民たちを奮い立たせるよう俺とトワレットが鼓舞して上に立つ』というものであったが、それではエルセとジェニが邪魔で、いつか俺たちの地位を脅かすかもしれないことを考えて、俺とトワレットは工作をすることにした。
バカな愚民たちも俺たちの放った扇動員たちが『戦犯勇者テラを許すな』、『一族郎党根絶やしにしろ』、『我らの家族の死を償わせろ』と騒いだら、まんまと誘導出来たからだ。
そう、全てはうまくいった。
唯一誤算だったのは、まさかエルセとジェニがあの包囲網を突破できるほど強かったということだが、所詮は二人。
王国騎士団が総出で追えば、時間の問題だ。
あの二人を消せば……
「んちゅっ、あん♥ ビトレイ~♥」
それにしても、こいつの身体は相変わらず美味しいが、毎日だと少し飽きて来るな……それよりも俺はさっさと食べたいのが……、その時だった。
部屋の扉がノックされた。
「ビトレイ……様……アルナです」
「ヴァジナです……」
「ストレイヤ、まいりました……」
そして、良いタイミングだ! 御馳走が向こうからやってきた。
「うふふ、待ってくれたまえ、トワレット。まずは、反逆の芽を完全になくすための儀式をしないとね」
「あん、もう……ここまで火照らせてお預けだなんて……ま、仕方ないですねぇ」
「すまないね。では、入りたまえ」
俺が扉に向かってそう答えると、三人ともパーティーでなければ身に着けないドレスを纏って俺とトワレットの寝室に入ってきた。
その顔は涙で腫らしているようで……嗚呼……エルセに未練があるのだと分かり、忌々しくなる。
でも、それも今だけだ。何も問題ない。
「三人とも……よく来たね。ここに来たということは……分かっているね? 『セリフ』は覚えているかい?」
いつも気が強いアルナも、普段クールなヴァジナも、そして気高いストレイヤも三人とも頷き……
「私たちはビトレイ様の側室となり、寵愛を授けていただくためにまいりました……」
「エルセくん……い、いえ、戦犯勇者の弟である逆賊エルセのことなどなんとも思ってません……二度と……顔も……見たくありません」
「どうか、わ、私たちを抱いて、しょ、処女を奪い、そしてその高貴な子種を注ぎ込んで……あのような下等な男を忘れさせてください」
嗚呼! 興奮してきた! 漲ってきた! もう、たまらない!
「まだだ! それだけではない! 言ったはずだよ? 言葉だけではなく……俺は君たちにどうしろと言った?」
「~~~っ、は、はい!」
「……はい……」
「うっ、く、くぅ……」
俺の言葉に従い、三人がドレスのスカートの裾をたくし上げる。
三人の美しい御足……色っぽいレースのガーター……そして、パンティー!
アルナは赤、ヴァジナは黒、ストレイヤは白か。
「アルナは赤。情熱的な君に似合っているよ。ヴァジナは意外にも黒。男を惑わすいけない色だな、すぐに脱がしてお仕置きしてあげるよ。ストレイヤは純白とは天晴だ。はははははは、よし、では君たち三人を信用し、俺の側室にしよう!」
見たか、テラ! 負け犬のお前とその家族なんぞ、もう俺の敵ではない!
「では、アルナとヴァジナの御父上に対して国が全面的に援助して商会の雇用を守るために全力を尽くそう。これで何百もの家庭が救われるだろう。もちろん、商会からの援助ができなくなり、維持が難しくなった孤児院へも国が全面的に補助するよう働きかける。君たちがよく手伝いに行ってたところ……安心しただろう?」
「あ、ありがとうございます!」
「はい……どうか……」
「ストレイヤ、誰がスカートを降ろしていいと言った! パンティーをもっと見せなさい! テラと同じように本来は君の死んだ父上も将校ゆえに戦犯として、君も君の妹も処刑となるところだったのだぞ? 幼い妹を救いたいのだろう!」
「も、申し訳、ぐっ、あ、ありません……」
これからは、俺の時代だ!
「さぁ、三人の乙女たちよ、俺と交わり―――――――――――」
そう、俺の時代が来る……はずだったんだ!
――ドオオオオオオオオオオオオッ!!
「ッ!? な、なんですの?」
「い、今の音は、外か? なんだ、敵か!?」
だけど、俺たちの野望はこの爆音とともに―――
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