萩市立地球防衛軍☆KAC2024その②【住宅の内見編】

暗黒星雲

第1話 一人暮らしへの渇望

「俺はこれでも大学生なんです。学業に集中したいんです」


 綾瀬正蔵。山口大学の三年生である。現在、彼の住居は笠山の萩市立地球防衛軍本部となっている。通学に一時間半かかるのと勉学に差し支えるので山口市内のアパートへ引っ越したいと希望していた。


「防衛軍のアルバイトはどうするのだ?」


 隊長のララの問いかけに正蔵は俯き加減に答えた。


「休日のみお願いします」

「未確認攻勢生物が出現するのはお前の休日とは限らんのだが?」

「そこは……」


 口ごもる正蔵である。

 そこへ椿が発言した。


「私が正蔵さまと一緒に暮らすという条件では如何でしょうか? いざとなればテレポートしますから。数光年でしたら一瞬で跳躍します」

「なるほど。それならば許可せざるを得ないな」


 ララの言葉に眉をしかめる正蔵だった。それは何故かというと、彼は大学生らしく麻雀したり合コンしたりしたいのだ。しかし、見た目が三歳児の椿に付きまとわれてはそれができない。故に一人暮らししたいと申し出たのだが。


「あの……椿さんが付いてくるんですか?」

「当たり前だ。地球防衛に絶対防衛兵器アルマ・ガルムは欠かせない。お前が不在だと万が一の危機に即応できない可能性がある。椿様がお前に付き従っているのなら安心だ」

「はあ、そうですか……」


 うな垂れる正蔵。そして椿は嬉しそうにはしゃいでいる。


「正蔵さま。新婚……みたいですね」


 しかし、正蔵は乗り気ではない。


「ふむ。善は急げだ。さっさと山口市内の不動産屋に行ってこい。車は黒猫に出させる。最上も付いて行け。正蔵がぼったくられんように見張りを頼むぞ」

「わかりました!」


 突然、セーラー服姿の最上が返事をした。相変わらず影の薄い彼女は、すぐ傍にいたはずなのだがララ以外には気付かれていなかったりする。


 そして一行は防衛軍のハイエースに乗り込み、山口市へと向かった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る