そして私は、夢と溺れる。

@amethyst-purple

第1話 3月1日

暗く、小さな部屋にひとり。

コチンコチンとなる古めかしい時計が孤独を強調させる。

使い古されていた敷布団は体をあたたかく包むけれど、私の芯を置いてきぼりにする。


私は何故ここにいるのだろうか。

私は何故ひとりなのだろうか。

問いかけるたびに左心房が烈火のように燃えあがる。

問いかけるたびに右心室には幾万もの氷の針が突き刺さっていく。


あの日、逃げ出した場所に帰ってきてしまった。

あの頃ほどこの場所に嫌悪感はないが、居心地は最悪だ。

幸せになりたかった。幸せになろうとした。

それが間違いだったのか、方法が間違っていたのか。はたまた全てか。


今の私には何もかもわからない。

今の私には何もない。

ただ、体の至る所に張り付いている瘡蓋のような記憶が、私の心を縛り付けていく。



一枚一枚思い返してみようか。

辛い言葉を。

裏切られた思いを。

見下してきたあの目を。

不安に揺れ動かされた心を。

一握りの幸せを。

捨てられたあの日を。

夢に逃げた思考を。

醜かった自分を。



そして私は、過去に溺れる事にする。

そうすれば、過去を明日に変えられるといいな。

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