第13話 嫉妬
5,6時間目が終わり放課後、俺となゆは近くのショッピングモールに来ていた。日用品から衣服、装飾品、食品など多くのものがここで揃うためうちの高校定番のデートスポットとなっている。
「ここにあーくんと2人きりで来るのはひさしぶりだね!」
ここには俺となゆ、そして唯人の3人で来ることはあったが2人だけというのはなかなかない。そのため端的にいうと俺はなゆとの制服デートに浮かれていた。
「ねぇねぇ!あっち行こうよ!」
「おう」
なゆは嬉々としておしゃれな洋服店に入っていく。俺はそのあと1歩後ろをついていく。
「ねぇこれどうかな?」
「とても似合っている、が夏っぽくするならそっちのほうがいいんじゃないか?」
「あっ、確かに!じゃあこっちにしよ」
茶髪でセミロングな髪に夏っぽいカジュアルな服がよく似合う。やはりなゆは素材がいいから何を着ても着こなせるな。なゆは1年に数人からは告られるほどの美少女だ。それもあったため俺となゆの件がここまで大ごとになったのだ。
「お昼ご飯どこ行く?」
ふとなゆが思い出したかのように言う。今のなゆは先ほど買った夏服に着替えている。
「どうしよっか、何か食べたいのある?」
「お肉!」
それならこのモールの中にステーキ屋があったはずだ。俺たちはすぐさまステーキ屋に向けて足を進めた。店内に入るとおしゃれな欧米モダン風の雰囲気でとても居心地が良い。お腹がすいているためさっそく店員を呼び注文に移る。
「えっと、じゃあこの自家製ハンバーグの鉄板焼きを1つと、なゆはどうする?」
「じゃあチキングリル1つで」
「かしこまりました」
おっと、そうだ。
「すいません、チキングリルって目玉焼き乗ってますよね?」
「はい」
「目玉焼きを抜くことってできますか?」
「可能です。そういたしましょうか?」
「お願いします」
なゆは卵アレルギーなんだ。幼稚園の頃たまご入りのお菓子を食べてしまって病院に搬送されたことすらある。ふとなゆの方を向くと驚いた顔でこっちを見ていた。
「…覚えててくれたんだ」
「ん?当たり前だろ?」
当たり前だ。もしなゆに何かあってもすぐぬ対応できるようにしておかないとな。
「えへへ、、」
「どうしたんだ?」
「いやぁ、愛されてるなぁ〜って。でももうほぼ治ってるから大丈夫だよ~」
「ん、そうだったのか、それはよかった。じゃあ悪いことをしたな。ごめん。」
「全然!むしろうれしいから!」
なゆがデレデレしだした。そんななゆをかわいいなぁと思っているといつの間にか料理が届く。
「「いただきます」」
箸でハンバーグを切ると溢れんばかりの肉汁が出てくる。それを1度白米の上にバウンドさせてから食べる。めちゃくちゃうめぇ。
「ん〜、おいし〜!」
箸が全く止まらない。気づけば俺たちは無言で食べ続け、完食に至っていた。少し余韻に浸ったあと会計を済まして外に出る。
「美味しかった〜、あーくん次どこ行こっか?」
「飯食った後だし適当にふらついとくか」
解散するのは嫌なので俺たちは特に理由もなくショッピングモール内を散策することになった。俺は何もしなくともなゆと一緒にいられるだけで幸せだ。そして十数分も歩いたころ、前方に見覚えのある人影が浮かんだ。すると向こうもこちらに気が付いたようで急に腕を組みだしていた。十数秒黙り込んだ後俺は話しかける。
「……唯人、奇遇だな」
「…うん、そうだね」
会話が途切れる。次はなゆが口を開いた。
「どうして2人が一緒にいるの?」
これには生徒会長が答える。
「…付き合っているからだが?」
そういいながら2人は強く腕を組みなおした。だが俺はその動作のぎこちなさに少し違和感を覚える。そしたまた訪れる長い沈黙。俺は思考を整理しながらもう1度話し始める。
「唯人、お前らさ、本当に付き合ってんのか?」
「「え?」」
唯人と生徒会長、両方驚いた声を出す。
「本当に付き合っているのならいいんだ。俺に口を出すようなことは何もない。けどな、俺にはお前たちの行為が俺に嫉妬させるためのように思えるんだ。」
「「…………」」
2人は無言になる。
「もし本当にそうだったらの話をしよう。なぁお前ら、馬っ鹿じゃねえの。嫉妬させるため?するわけねえじゃん。俺はなゆが好きだからなゆを奪ったんだぜ?もしこれで唯人に嫉妬してたら俺はクズ以下じゃねえか」
俺はなゆが好きだから寝取った。悪いことだが事実で、だから俺はクズである。だがここでほかの女に目をつけるような真似をしたらそれはクズ以下だ。俺はそうは絶対にならない。
「行くぞ、なゆ」
まだ無言のまま固まった2人を置いて俺たちはこの場所から離れた。そこで俺は
なゆにある提案をする。
「戻って謝りに行くか?今ならまだいけるぞ」
するとなゆは少し考えてから行かないと言った。
「どうしてだ?」
「…だって私後悔してないもん」
…ははっ
ああそれでいい。俺たちはクズなんだから。
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