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「ここ、私の生まれた場所なんですよ」

「ハッピーバースデー」ホラーは言う。

 ひなは小さな声で、でもはっきりと、『先ほどの秘密の答え』をホラーに教えてくれた。

 ひなの目は今も穴と壁と、そしてホラーではなく、じっと暗い大地に向けられている。

 ホラーは自分を見ようとしないひながどんな表情をしているのか、少しだけ考えてみた。そしてホラーが思い描いた空想のひなの顔は、あのなんの感情も浮かべていない、初めて出会ったときのような、ずっとじっとしている、動かない人形のようなひなの顔だった。(ホラーそっくりのひなの顔だ)

 変なこと考えてごめんね、ひなちゃん。

 と、ホラーは心の中でひなに謝った。

 それからホラーはごめんね、の言葉の代わりにそっと、不意打ちで、ひなの頬にキスをした。

「きゃ!」

 と声を上げてひなが大げさに驚いた。

 信じられない、といった表情をして自分を見るひなを見て、ホラーはそんなに驚かなくてもいいのにな……、と思い、ちょっとがっかりした。

「ハッピーバースデー。ひなちゃん」

 もう一度、ひなの手をぎゅっと握りながら、ひなの両目をしっかりと自分の両目で見つめながら、ホラーは笑顔でそう言った。

 瞬間、ひなの手がぶるっと小さく震えた。

 そして、その美しい海のような青色の目には涙が溢れて、それは我慢しきれずに一粒だけ、ひなの白い頬のつたって暗い床の上にぽとり、と落っこちた。

 ひなの頬には涙の跡が残っている。

 その跡をホラーはそっと自分の右手の指で拭った。

「早く消さないとそれ、ずっと残っちゃうからね」

「……」

「どうしたの?」

 ホラーは質問をする。

 それから小さなひなの体をしっかりと自分の体で抱きしめた。

「……りがとう」

「なに? よく聞こえない」

「ありがとう、ホラーさん」小さな声でひなは言う。

 それからひなはまるで川が洪水を起こしたように、反射的に泣き出した。たくさんの透明な涙が、ホラーの体の中を流れていった。それをホラーはとても愛おしいと思った。

 ひなの涙はあったかい。(冷たくなんて、全然なかった)

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