　ホラーがいつもよりも真面目に穴掘りの仕事をしていると「今日はどうしたの？　まだ熱でもあるの？」と影が言った。

「最近、死者の数が増えてきたよね」せっせと冷たい大地に愛用の小型のスコップで穴を掘りながらホラーは言う。

「うん。増えた。少し前までは一日にこんなに穴を掘る必要はなかったよね」影は言う。

　ホラーはふと暗い空を見上げる。

「地上でなにか大きな災いでもあったのかな？」

「さあね。そんなこと私たちにわかるわけないでしょ？　それよりも仕事や仕事。早く仕事を終わらせてお昼ご飯を食べに行こうよ」嬉しそうな声で影は言った。

「早く自由になりたい」汗を拭ってホラーは言った。

　お昼ご飯の固いパンをお腹いっぱい食べて、午後の仕事をしているとき、「今日はさ、このまま夜に映画を見に行かない？」とホラーは影に言った。

「別にいいけどさ、珍しいね。映画なんて。あんまり見に行かないでしょ？　ホラー」スコップを器用に動かしながら影は言った。

「見たい映画があるの」

「どんな映画？　コメディー？　喜劇王のやつ？」

「違うよ。えっと、これこれ」そう言ってホラーはポケットの中にしまっておいた映画の宣伝用の紙を影に見せる。その映画の題名は『存在と永遠回帰への空想』だった。（ホラーはとってもわくわくした顔をして影の反応を見ている）

　その映画は題名と同じ名前の哲学書が大流行したことによって急遽いろんな人たちが集まってお金と才能を集結させて制作された話題作だった。だけど元が哲学書であるために見る人を選ぶ映画でもあった。

「相変わらずこういうの好きだね、ホラー」

「うん。大好き」今日一番のきらきらした笑顔でホラーは言った。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい