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獣の頭蓋骨の骨をホラーはじっと見つめていた。
欲しいと思った。でも、結構値段が高い。簡単には買うことのできない高級品だった。でも数ある獣の頭蓋骨の中で、その少し小さめの獣の頭蓋骨は、なぜかホラーの心を強く惹きつけた。
小さなきっと子供の獣の頭蓋骨の骨。性別はたぶん女の子だろうと思った。(丸みを浴びた形など女性的な特徴をその骨は持っていた)
もうかれこれ一時間くらい、ホラーはその獣の頭蓋骨の前に立って、その骨を買おうかどうか悩んでいた。(あまりにた迷っていたので、影は呆れて違うお店に買い物に行ってしまった)
ホラーは悩んだ挙句、その獣の頭蓋骨の骨を購入した。
「人間の関係性はとても薄くて脆い。どんなに有効な関係性でも、その関係性はたった一晩で、いや一言でも崩れ去ってしまうような砂の城のようなものだ。その関係性はお互いの努力と努力によって成り立っている。その努力をどちらかがやめてしまえば、関係性は維持できなくなってしまう。あっという間になくなって、人間は孤独になる。一人になるのだ。それが関係性だ。だんだんと薄くなり、遠ざかっていく。温かいものから冷たいものへと、熱が移動するように、冷えて固まっていく。閉じていく。動かなくなる。痛くなる。そんな悲しいものが関係性の正体なのだ。人間たちはそんな関係性をとても大切にしている。関係性のために勉強して、関係性のために働いて、関係性のために生きている。それが人間の正体なのだ」
街の中心の広場で道を歩くたくさんの人たちに向かってそんなことを演説している老いた死神の老人がいた。
その老人の言葉をホラーは群衆に混ざって、少しの間、両手の中にさっき買ったばかりの獣の頭蓋骨の骨を抱きしめながら、真剣な目をして聞いている。
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