「冷静になってよく考えてみなよ。仕事をやめてどうするの? なにかやりたいことでもあるの?」影はにやにやしている。

「そう言うわけじゃないけど、ここの労働環境は良くない」怒った顔をホラーはしている。(白い頬が膨らんでいる)

「まだホラーは明るい地上に憧れているの?」

 影に本音を言われてホラーは黙ってしまった。(その通りだったからだ)

「地上に行けば幸せになれるの? 一度も行ったことがない場所に? 物語でしかみたことがないのに? 噂でしか知らない場所なのに?」

「穴掘りはもうしたくない」ホラーは言う。

 ホラーは食堂からの帰り道でお財布を出して中を見てみる。(黒いがま口の小さなお気に入りのお財布だった)

 ちゃらちゃら音がする。少なくともからっぽではない。逆さまにして中身を手のひらの上に出してみると、古いコインが五枚出てきた。(これが今のホラーの全財産だった)

 ホラーは紫色に光る水晶の光を頼りに歩き慣れた道を歩いて、自分のお家に帰っていく。

 歩きながらホラーは(笑顔で)歌を歌ってる。

 遠くに見慣れた自分の小さな家が見える。

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