やわらかくないシュークリーム
仲仁へび(旧:離久)
第1話
昔かよっていた教室で、シュークリームの作り方を習った事がある。
私は先生の話を聞いて、ちゃんと作ったつもりだったけれど、その結果は表面が固くなってしまったシュークリームだった。
先生はシュークリームのやわらかさは、心のやわらかさだと言った。
それを聞いた私は、「そっか私の心は柔らかくないから、こんな風になっちゃったのか」と妙になっとくした。
お菓子作りができる可愛い女の子。
そう言われたいから、頑張って習っているだけで、別にお菓子作りが特別に好きとかじゃないのだから。
「失敗したわ。おいしく食べられないお菓子なんて、プレゼントしても意味ないわね」
義務で作ったシュークリームが失敗した。
会社で贈り物をもらったから、一番得意な方法でお返ししようと思ったけれど、うまくいかなかった。
久しぶりに苦手なものを作ってみようと思ったたけれど、やはり腕は変わらないようだった。
だから私は冷蔵庫の中へ入れっぱなしにしたのだった。
それからシュークリームは、冷蔵庫でそれなりの時間を過ごした。
なまものだから早めに食べてしまわないといけないのに、そんな気になれなかったからだ。
けれど、友達が遊びに来た時に、それの存在が明らかになった。
見るからに美味しくなさそうなのに、友達は食べたいと言った。
「へただから、プレゼントせずにとっておいたものなのに、本当にいいの?」
「ふわふわじゃなくたって、見本のようじゃなくたって、誰かが気持ちをこめて作ってくれたものなんだだから、せっかくだし食べてあげたいじゃない?」
やがて、かちかちのシュークリームが、友達の胃の中に消えていった。
「とても硬くてシュークリームらしくないけど、シュークリームらしくなくてもこれは立派なシュークリームだったよ」
友達の優しさが嬉しかった。
もう作りたくないと思ったのに、また気が向いた時に作ってみても良いかなと思うようになった。
どうしてだろうか分からない。
その出来事がなにか関係あるのか、ないのか。
けれど、それ以来私の作るシュークリームはかたくない、やわらかいシュークリームになっていった。
やわらかくないシュークリーム 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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