那智風太郎プレゼンツ『桜猫企画』優秀作品 Best 6
彼にとってその年上の彼女との思い出はいつまでも色褪せない寒緋桜の色の記憶。
一方、彼女にとってその年下の彼と過ごした時間はソメイヨシノのように儚げに散り行く思い出。
彼らの想いは過ぎ去った時間によってどんな風に色合いを変えてしまったのだろうか。
男と女。
互いの立場から見つめたひとつの恋の行方。
巧みな対比でその成り行きと結末が描かれていることで読み終えた者はどちらの立場により近い経験があるのか、そう自問してしまうに違いない。
「双方の岸より眺めての川」
恋というものも同じく互いの目に映る景色は総じて違っているものだろうと思う。
思わずそんなことを考えてしまうとても興味深い作品。