〈sequence 01 : そして、その地に至る〉

1.ある蛙顔の述懐

 二十世紀の後半。国々がこぞってロケットを打ち上げていた、いわゆる宇宙開発戦争が事実上終結した、その直後。二機の惑星探査機が宇宙そらへと打ち上げられた。

 彼らの任務はふたつ。ひとつめは、地球の隣人たる太陽系内の惑星についての情報を集めること。そしてもうひとつは、地球人の友人たりえるかもしれない、恒星系外の異星人にメッセージを届けること。

 地球と地球人の情報を刻み込んだ黄金色の金属盤ゴールデンレコードを積み込んで、いつか誰かに届くようにという願いを背に、遠い暗闇の世界へと旅立っていった。


 それから少々の時が流れて、

「あン時ゃ、すごく気まずくてヨォ」

 と、カエル顔のその男は、目をギョロつかせながら、記者の質問に答えた。

「あの手紙はさァ、『いつか宇宙人が読んでくれたらいいナ』ってやつだろォ? ラーメン屋のテレビで全文見ちまったんだよ、俺等ァ。いっそ名乗り出ちまったほうがいいのかとも思ったぜ、あン時ゃヨォ」

 それはまあ、そうだろう。

 ボイジャー計画プログラム。当時の地球人にとっての宇宙開発の最先端にして夢の結晶。確率的には限りなくゼロに等しい可能性に賭けて、異星の友というロマンを追い求めた。

 そして夢やロマンというやつは、宿命的にどうしようもなく、現実リアルとは噛み合わせが悪いものだったりするものだ。

「言えなかったんだよなァ、あン時はまだ、ご時世的になァ。、なんてよォ……」

 つまり、そういうことだ。

 一般には知られていなかった、秘されていただけだったのだ。

 いつかの邂逅を夢見る必要などない。彼らはずっと、そこにいたのだと。

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