WAKE 4

 雲が低い。風が走る。重い色をした水面が、雨滴の作る無数の輪をのせたまま右から左へと遠ざかってゆく。

 濡れた草葉の根元から何かが跳ね、ぼしゃりと冴えない音がした。音を追い足下を見れば、いつの間にか、ぬるんだ水が爪先を洗っている。

 遠い雷が空の奥からしきりに響く。稲妻の閃きを探すが間に合わない。灰色の空と、遥か向こう岸との境目に、寄り添い支え合うように立つ巨木が二本あるばかり。

 すぐそばで鳥が鳴き、細い葉が舞い落ちてくる。

 細い震えが背骨を走り、白い吐息が鉛色の川面を渡り向こう岸へと飛んでいった。

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