【短編】【KAC20242】ブラックリストトップ男の、住宅の内見

南都那氏(なんとなし) ニート風味

第1話 事情のある男


「防音断熱で生活するのに便利な、地下鉄の駅まで5分!コンビニまで5分!コインランドリーまで20分!エアコンは新品です!」

「ここに決めます!」

 僕は部屋を一通り見渡して、即決そっけつした。


「では大家さんの審査が通るまで、数日お待ちください! 電話連絡いたします!」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 3日後。

「大家さんの審査、通りませんでした。それで、次の来店はいつにしますか?」


「明日うかがいます」


「審査は通りませんでしたが、心配しないでくださいね? ちょっと絶望的な感じにブラックリストに登録されていますが、いい物件を用意しときますので!」


「よろしくお願いします。今住んでいる部屋、今月中に退去するように言われているんです……」


「まかせてください! うちの店のつてを、最大限に使って探しますので! ただ生活の便利さと防音断熱は保証できるのですが、ちょっと遠くになるので仕事は変わってもらうことになるかもしれないのですが……」


「そうですか……しかたないですね。わかりました!」


「それでは明日、お待ちしています!」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「○○さん、びっくりしましたよ! ブラックリストのトップに登録されていて、不動産仲介業者が理由を知りたければ内閣府直通電話番号に電話しろって書いてあったんですよ?」

「ええ? 僕、そんなの心当たりがないのですが?」


「○○さんあなた、1月24日生まれだけがなる星座の『フェアリーの友達座』なんですって?」

「ええ? 『フェアリーの友達座』でも部屋を借りられるって、インターネットで調べたのですが?」


「それは普通の『フェアリーの友達座』や名前に『妖精の友』と言う意味のある『アルヴィン』と言う名前は、数匹のフェアリーにまといつかれるだけですが。○○さんの場合は何匹のフェアリーが部屋に入り浸ってるんでしたっけ?」


「……数百匹です……」

「え? もう一回、お願いします」


「数百匹です!」

「そうです! フェアリーは1匹でもラクガキをしたり花壇かだんの花をむしってみつを吸い続けたりいたずらしたりするのに、数百匹です! そりゃあ、ブラックリストのトップにもなりますよ!」


「じゃあ、部屋探しは無理ってことですか?」

「そこは、安心してください! あなたの事を見込んで、快適な住居と高収入の政府の仕事を用意してくださる方を見つけておきました!」


「はぁ。あやしくないですか?」

「あやしくないですよ? ただ政府の機密情報なので、目隠しして案内しますね!」

「ええ?」



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