戦争を知らない大人たち

第11話 兵器を止めるのは軍隊か?



 ここにきて疑問。



 これね。

 兵器がね。

 それも驚異的な未知の巨大陸戦機動兵器がね。


 急に住宅街に現れて。


 まぁ、竜巻通過程度ではあるが結構いろいろと被害も出して。

 大衆が見守る中飛び回っているわけですよ。山の中とは言えね。


 ガトリング砲の発砲自体はあっという間に弾が切れたので目撃証拠があるかどうか微妙ですけど。


 こういう状況において、政府や自衛隊、っていうかあれですよ。

 日本にはあの血の気の多いアメリカ軍までいるんですよ。


 沖縄ばっかり有名ですけど、

 日本には各地に百三十ヶ所ものアメリカ軍基地があるワケで。


 ギャンダムが飛び跳ねている現場、千葉県君津市の近場だと、『横田米軍基地』から現場まで直線距離で 六十六キロメートル。

『厚木基地』から現場までなら直線距離で 四十三キロメートル。


 それがあの巨大兵器を目の当たりにして何もしないのかと。

 動かんのかと。動く気配はないのかと。



『日米安全保障条約』→『日米相互協力及び安全保障条約』→『日米防衛協力のための指針』→『日米安保共同宣言』という、熟成を重ねたわけわからん呪文には。

「日本になにが起ころうとも別に米軍が助ける義務が書かれてねーよ(笑)」とアチラの偉いさんに言い放たれちゃってるとはいえね。


 いやいやいやいや。

 別にここでは日本を助けるとかそういう話をしてるわけじゃなくてね。

 そんなおめでたいことを言いたいんじゃなくてね。

 物騒でしょ? ってこと。誰にとっても。在日アメリカ軍にとっても。


 とりあえずアレは戦闘ロボットじゃん、武装してるかどうか未確認でも。

 めっちゃデッカイ盾を持ってるし、あれだけでもモロに戦闘を想定してるし。

 あんだけの重量物がけっこうなスピードで動いてるだけで超危ないじゃん。

 特大型の重機が暴走してるようなもんでしょ?

 危機感とか無いのかと。

 あれを見て対応しようと思わないのかと。



 と思ってたら、アメリカ本土でも同じような事件があったわ。

 すでにそういう前例があるわ。


 ──自動車修理業のおじさんが、

『キルドーザー』と呼ばれる、自作の積層装甲で守りを固めた改造ブルドーザーで

 自分らを虐げた市長宅や市役所やコンクリート工場をつぎつぎと襲撃し、破壊した事件(死傷者は無し)があった。


 M60パットン戦車(バカでかいぞ)や、装甲車が盗まれて街中を爆走するなんていう。

 まるで人をバンバン殺しまくる不謹慎ゲームかマッチョアクション映画みたいな、とんでもない事件が何件も普通に起こってた。


 さすがアメリカ! 恐るべし!


 しかし、それら事件でも何台ものクルマを踏み潰したり公共物を破壊したりと、今回の事件にも思いっきり通じる。というかそれ以上の相当な被害額、わりと怪獣が暴れてるのと変わらん状況の被害が出てたが、それでもあくまで対応したのは地元警察だった。

 別に軍隊なんかは出動していない。


 そうなのだ。

 軍隊は簡単に動かない。


 軍隊の戦車が盗まれて走り回っている事件でさえ、対応するのは警察なのだ。

 決して軍隊ではない。軍隊はそのような理由でいちいち出動するものではない。

 ここを勘違いしてはいけないのだ。


 なら他所の国で、ヘンテコロボットが何をしようが知ったこっちゃないか。

 っていうかアメリカ軍は上下両院の承認がなければ軍隊を出せないって話だしね。


 つまりこういうこと。


 映画なんかのフィクションみたいに、軍隊がすぐさま出動! って風にはならないってこと。


 とりあえず、なにがなんでも警察でなんとかしろ。──これが現実。


 それでもゴジラをはじめとした怪獣の強襲や敵国の攻撃といった、脳が錆びついてるおじいさん政治家が見ても、明らかに警察ではどうにもならんな、ってわかっちゃうレベルのあらゆる荒事が日本に襲いかかった場合には。

 うーん……、しぶしぶ自衛隊が頑張って対応するしかありません。


 そんな都合よく各国の軍隊が出動して協力して迅速に解決にあたる、なぁ~んてことは起こり得ません。


 自己責任。日本の、自治体の、自己責任。

 その次が、……自衛隊。


 がんばれ! 自衛隊。



 う~~~~ん、まぁ~~~でも。

 ちょっと……動かんだろうねぇ、自衛隊だってねぇ……。



 っていうか、日本人が外敵が現れたときに、なんらかの武装した国際組織的なものが助けに来てくれると心の何処かで思い込んでるの、完全に『ウルトラマン』や『サンダーバード』を観て育った団塊世代の影響なのではないだろうか?






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