第3話 さあ、みんなで、考えよー!
ここで少し議論の余地がある。
彼女は普段、SNSで赤の他人や、村おこしのポスターといった、どう転んでも無害なものまでを執拗に口撃しまくっていたワケだが、その主なターゲットはいわゆるオタク男性だった。
これには明確な理由がある。
もちろんそれは倫理的な理由などではなく至極愚直な合理的理由。
つまり、
オタクの男ならいくら理不尽に殴り蹴り踏みつけても世間は文句を言わない。
という理由である。
それは自他ともにもう揺るぎようがない正義、絶対正義、絶対性理論。
台所にいる茶色い害虫。
アレだ!
オタクはアレだ!
ドブネズミや人食い熊、殺人スズメバチですら駆除は可哀想と愛護の声が湧き上がるのに
あの茶色いやつだけは誰もその生命を尊重しない。
アレだ!
オタク男はアレなのだ!
それぐらいの忌み嫌われるべき存在なのだ、オタク男というものは!
彼女はそういう考えである。
揺るぎない信念である。
にも関わらずだ。
今、フェミ子が乗っているそれはなんだ。
ギャンダムだ。
『機動戦機ギャンダム』
半世紀前に生み出され、社会現象を巻き起こし、絶対的人気を得てシリーズが作り続けられ今に至るそのアニメ作品。
この作品こそ日本のアニメオタク男性の根幹を成していると言っても
過言ではない作品なのだ。
(いや過言なのだが、今どきのオタク文化はそんな狭いものじゃないのだが、それでもかなりぶっとい年季の入った潮流の一つなのは事実である。)
そのファンの男女比率、実に[9対1]で圧倒的男性オタク向け作品なのである。
その象徴、主人公機、巨大ロボット、それが『ギャンダム』
……あれれ? と。
ならないんですか? と。
あれほど全身全霊音速を超える頑丈な皮で編み上げられた奴隷をしばくムチの先端
それを思わせるしなり具合でバッッッチンバッッッチンあなたが殴りつけていたオタク男性。
そんなオタク男性が大好きなメカ、プラモやフィギアになってオタク男性の部屋にたんまり飾られているロボット。
そのギャンダムに搭乗してなんとも思わないんですか? と。
平気なんですか? と。
さあフェミ子はどうする……!
どうするよ?
あんな大嫌いな不潔で愚鈍で早口なオタクどもが頬ずりしまくってその皮脂がこびり付いて、新品のプラモでもオタクの童貞臭が臭ってきそうなそのアニメロボット。
そんなものの操縦席に座らされてどーよ?
全身ジンマシンとか出ちゃわないのかよと。
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