『神様がくれたロボット』世界最強は誰か分からせます。
cyanP
リターン オブ パゥワァ!
第1話 〈状況を把握しました。全力で支援いたします。〉
『あなたが強いロボットなら、わたしを世界の覇者にできる?』
それが新しいパイロットとなった彼女の望みだった……。
────ワタシは直前まで極度に混乱していた。
観測される範囲に戦火が見られないのだ。戦闘物質も観測されない。
小高い丘より見下ろす景色は多くの船が行き交う、どこまでも平和な港湾と市街地。周辺には対空砲座すら設置されていないようだ。
ここはどこだ? 地球のようだが何かが違う。ワタシのデータベースにある地球とは何かが違う、現在地すら分からない。
友軍のデータリンクが見つからない、戦闘時に必ず散布されるレーダーを無効化する電磁波阻害物質が見当たらない、その痕跡すら無い。
まさか月軌道の外側までもが戦域となったこの時代、地球上に戦闘の痕跡が一切無い地域などあり得るのか?
すぐさま近隣の情報網にアクセスしてみた。
ワタシが人間なら驚きの声を上げていただろう、信じられないほど古臭いネット技術が現用されている。どこまで調べても現代の技術ではない。アーカイブにある過去の記録とは一致しないが、およそ100年ほど過去に相当する技術でこの世界は占められている。
……どういうことだ? タイムトラベルでもしたというのか。
──現状、どうやら補給等は得られるが完全に孤立しているようだ。この機体以外の信号は無い。単機、独立兵器状態だ。
危険。危険。危険。……。
友軍が見つかるまで機体を隠すべきだ。息を潜め、決して戦闘などしてはいけない。
例え100年のアドバンテージがあったとしても、たった一機で見知らぬ世界と戦うなど非論理的過ぎる。恐らく窮地に立たされるだろう。
──だが負ける気はしなかった。
なによりパイロットの望みは生き残ることではない。
それゆえワタシは答えた。
〈状況を把握しました。全力で支援いたします。〉
彼女は嬉しそうに微笑み、ワタシを【 シエンちゃん 】と呼ぶようになった。
──開戦より2週間で全人類の半分を失った地球と宇宙人工島郡との絶滅戦争。大量に降下してくる巨大機動兵器軍団。その圧倒的不利な戦局を覆すために生み出された者。それがワタシだ。
宇宙世紀0081年製、大型二足歩行ロボット陸戦歩兵型試験兵器『ギャンダム』
従うのは登録パイロットのみ。
== 彼女が望むなら、この世界のすべてを敵に回してでも戦おう。==
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
全く迷惑な事件が発生した。
アメリカ西海岸の街並みは大地震の爪痕のように瓦礫と化し。
きらびやかな『元ビルだったもの』は、あちこちガラスが吹き飛び、表面は焼け焦げ、窓枠からは真っ黒な煤煙を吐き出しつつ、チロチロといやらしい炎が真っ赤な舌を出したり引いたりしていた。
イラストレーターがよく描きたがるこの地域特有の、美しすぎる湿度のない真っ青な青空が今日もそこには有ったのに。
今日も何ごともないかのように全天に広がり世界観を覆っていたのにだ。
そんなポップな空の下。アメリカ軍の世界最強と称されるM1エイブラムス戦車が列をなして戦陣を敷き、狂ったように砲撃を繰り返している。
これが映画だったら、その能天気な空と地べたの地獄とのコントラストが激しすぎてセンスが良いのか悪いのか判断に悩むところだ。さわやかな風にそよぐヤシの木がいっそうそういう気分にさせた。この風に無粋な硝煙とガスタービンエンジンの排ガスのニオイが混ざってなけりゃなぁ。
戦車が砲撃するたびに雷鳴を思わせるすさまじい爆音が衝撃波となり目に見えて周囲を激震させる。建物がきしみ、すでに割れて窓枠にこびり付いていたガラスが遅れてこぼれ落ちる。乾いた地面の粉塵を巻き上げ、それを映している報道のカメラをカメラマンごとゆさぶり、映像が激しく乱れた。
戦車たちは重く硬い劣化ウランの矢を超音速で撃ち出している。
現代戦車が主に使う砲弾、APFSDS,(装弾筒付翼安定徹甲弾)は
おもしろいことに本当にお尻に羽が付いた非常に細長い矢のような形をしており。
その無数の矢が必殺の威力で向かう先は、破壊された街やクルマや戦車がもうもうと燃え上がり幾筋もの黒煙が立ち上る廃墟の向こう。
陽炎をまとって立ちはだかる白い影。
砂埃が付着した汚れたレンズのカメラがズームすると
その物体は浴びせかけられる湯水のような砲撃を簡単に弾き返し、劣化ウランを霧散燃焼させている。
それは、────
ああそれは……
『こ、これは版権的に大丈夫なのか?』
とアニメオタクなら思わずにはいられない絵面。
日本では知らない人は居ないという超有名なロボットアニメ
その主人公が操る劇中最強の巨大ロボット兵器。
『機動戦機ギャンダム』
全高約20.8メートル
『七階建てのビル』と同じ大きさにも及ぶ
巨大な人型の戦闘ロボットが悠々と立っているのだ。
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