嘘コク女だけど、アイツを捨てた元カノには負けたくない。身勝手な私です

とみっしぇる

第1話 嘘コクされる男

「春田、前から気になってたんだ。付き合って」


「はい秋庭さん。よろしくお願いします」


5月13日、リュウは美少女から嘘コクされた。


◇リュウ◇春田リュウタロウ、173センチ62キロ◇


5月10日。金曜日


あれから11か月。そろそろ元気だそうって思っても、辛くて仕方ないんだよね。


期待させてすまんが、俺は何の変哲もない高2男子。


中学時代はそこそこおしゃれしてたけど、ちょっと面倒くさくなった。


今は髪を伸ばして結んでるだけ。


まずまず筋肉質。中学まで幼馴染みを守るために、空手を続けてた。


今は空手は辞め、長い階段を昇って体力だけはキープしてんのよ。


成績は上の方にいられるように勉強してる暗いキャラだな。


本来の自分に戻っちまったよー。やばい。


5月10日の金曜日、課題を教室に忘れた俺は電車に乗る前に引き返した。


すると教室から女子の笑い声が聞こえてきましたね~。


なんか面白そうな話してるね。


秋庭サクラ、イヤマメグミ、ヤマシロアンリの美人ギャル3人だ。


今年からクラスが一緒で、これ以外に俺に接点がない。陽と陰は混じらんのだ、とほほ・・。


同じ中学のやつも2人だけ違うクラスにいるが、恐らく3人との知り合いはいない。



「サクラの負けだぞ~」

「さ~て罰ゲーム。約束通り、週明けに誰かに嘘コクして、何日間か付き合えよ」


嘘コクって、イタズラだよね。ドッキリみたいの、あいつらもなかなか悪よのー。


秋庭は特に美人だからな。嘘でも告白される名誉は誰がもらうんですかい。


「ち、分かったよ、私は隣の席の根暗春田に嘘コクするね」


なぬ?ぬあんと俺!


「そうそう。OKもらって、最低でも2週間は付き合いなよ」

「春田って、今年一緒のクラスになってから、サクラのことちらちら見てたじゃん。気があんだよ」


げげ、秋庭サクラを見てたのバレてるよ。まずい。


「私の美貌が陰気キャラまで引き寄せたか~」


「なんか、過去に女いたって話だぜ」

「まじ?」


「中学までは春田もイケてたってよ。幼馴染みの美少女と付き合ってて、去年捨てられたって話だ」


「なんで?」

「イギリスだかフランスに家族で引っ越して、ちょっとしたら音信不通だって」


うん。残念ながら間違いない。行き先はフランス。


LIMEも1年前の6月13日を最後に既読もつかないのだな。


トホホだ・・


「ええ~、それって少しかわいそ~」


秋庭サクラの声のトーンが少し変わった。母性本能ですかいな。


「だろ。だからサクラが、しばらく慰めてやれよ」

「ちょうどサクラだけ、彼氏いねぇだろ」


「サクラってさ~、私達と同じ高校デビューだけど、根は地味なんだから、結構合うかもよ」


「そこ関係ないでしょ。もう8か月くらいシングルだしなー。そうだね、夢くらい見させてあげよっかね~」


「背伸びしちゃって~」


「うっさい!」



ふと、幼馴染みからの最後のLIMEメッセージを思い出した。


『さよならリュウ』だった。


それを見て、慌てて返事を返しても既読が付かず、2度とメッセージは帰ってこない。


最近も、未練がましくメッセージを送っている。無反応のまんまだ。


ショックでこの1年、涙さえ出てないよ。トホホ・・


このギャル秋庭サクラ、自分で冗談ぽく言ってるけど、かなりの美形。


ものすごくはっきりした二重瞼で目が大きい。


ショートボブも似合ってる。


鼻から口にかけても綺麗で、口を尖らせてる写真がクラスの中に出回っている。


希望してない俺にも回って来るほどだ。


その写真を見たとき、ドッキーンとした。元カノに似てるんだもん。


スレンダーなのに胸もそこそこの159センチ。


大人しい人間が多いわが校に、なんで来たんだろ。敬遠されがちに見えて、かなりの人気だ。


幼馴染みに未練たらたらの俺だけど、気晴らしのチャンスが来た。


う~ん違うかな、短期間だからリハビリみたいなもんでしょ。


それも相手が美人ギャル。うっひょ~だろ、なあ俺。


あれからちょうど11か月。


告白されるのは、月曜日の昼。13日か・・


良かった。放課後だったら、用事かあって帰らなければならなかった。


おっと、告白されるまで、少しくらいは準備しよう。


小綺麗にするか。最終的にネットに晒しものになっても、恥ずかしくない程度にしよう。


ちょうどいい機会だから髪くらい切ろう。


去年の6月までは、色々と頑張ってたからな。


幼馴染みは格好良くなって俺が浮気しないか心配してた。


そんな可能性ねえよ!


俺って頑張っても、見た目が中の上。それも幼馴染みのあまあま評価をもってしてだった。


美少女の幼馴染みと、並んで歩けるように努力した。


なのにフランスに行って、突然の別れ。



罰ゲームの告白相手になる代わりだ。


ちょっとだけ生きる、希望をもらおう。


ざまぁ?う~ん。考えてねえ。


こっちも利用させてもらうから、おあいこでしょ。


最後は派手にフラれるのかな?


こっちも期間限定を承知で付き合うのだから、穏便にいきたい。



お互いに嘘で塗り固めたお付き合いになる。



だけど最初に言っておく。ありがとう、秋庭サクラさん。


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