第37話 父と



 俺は、あなたの奴隷じゃない。

 俺がどこで何をしようと関係ないはずだ。そもそも監禁する方がおかしい。


 色々と言いたいことはあった。

 しかし、俺は固まったままだ。

 自分が不甲斐なくて辛い。


「どうやって部屋から出た。色仕掛けでもしたか? お前の言葉には耳を貸さないように指導していたが、まだ愚鈍な者がいたのか。嘆かわしい」


 やれやれと大げさにため息を吐く父。

 色々と分かってからだと、その瞳に憎しみが宿っているのが読み取れた。

 全く隠そうともしていない殺気。

 これに今まで気づかなかった俺も悪い。


 こんなに憎まれていて、改善出来る日なんて来るはずがなかった。

 そう考えたら気持ちが楽になってきて、俺は父をまっすぐに見た。


 父は俺の視線に怯む。

 反抗的な目をしているから――いや、もしかしたら俺に母の面影でも見ているのか。

 それならそれでやりやすい。


「俺が母の子でも、あなたとは血が繋がっていなかったとしても、俺がここまでされる理由はどこにもない。憎いなら、さっさとどこかへ追いやるべきでした」


 図星をつかれた父は黙り込む。

 こんな簡単に口を閉ざすことが出来たなら、もっと早くやれば良かった。


「殺さないで育ててくれたことは感謝しますが、ただそれだけです。お互いのためにも、もう会わない方がいいでしょう」


 それだけ言い残すと、俺は動きを止めた父の横を通り抜けた。

 引き止める声は、最後までなかった。


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