メタバースの幻影
白鷹いず
⚫︎
プロローグ
兄貴が事故で死んでから1ヶ月が過ぎた。
何事もスピーディな今の時代のせいなのか、便宜上の繰上げ法要とかで初七日は葬式の当日に済ませ、その後の四十九日を待つまでもなく、家族はみんなそれぞれ今までどおりの生活のリズムを取り戻しつつあった。
だけどそんなのは上辺だけで、父も母も姉貴も、もちろん僕だって、自暴自棄に何もかも忘れてボーッとしていたいはずだ。時間が過ぎていくのをひたすら待ち続けて、憤りにも似た深い悲しみに耐えるためにじっとしていたいに決まっている。
だけど、父には会社がある。父は、葬式やなんだかんだで仕事を休んだのは1週間にも満たなかった。専業主婦の母は何事も無かったかのように相変わらず家事に追われている。姉貴もしばらくふさぎ込んで自分の部屋に引きこもっていたようだが、それでも単位を落とすわけにもいかないのだろう、半月も経たないうちに大学へ通い始めていた。
僕も1週間高校を休んだだけ。しばらくはクラスの連中の「同情してます」的な視線に耐えながら通っていたが、1ヶ月を過ぎた今はもう誰もそのことを話題にしなくなっていた。
結局人はいつか死ぬ。事故で突然別れを迎えた方が、病気で徐々に弱っていく姿を見るよりは幾分マシか? なんて思ったりもしたのだが……。
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