200字小説

松井

第1話 審判

「僕だって辛いんですよ。上司には怒られるし、恋人には振られるし、犬のフンは踏むし、夏は暑いし、冬は寒いし」

「言い訳はいらん!」

 閻魔の怒号が響く。罪人が首をすくめる。

「そんな怒らなくても」

「正直に言えば怒らん」

「ほんとに?」

「ほんとに」

 罪人は意を決して口を開く。

「僕がやりました」

「それでよし。約束どおり怒りはしない。だが、許すとは言っておらん」

 閻魔がボタンをぽちり。罪人はそのまま奈落の底へ。

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