ロフト付きワンルーム、最寄駅から徒歩5分、訳アリ物件につき格安。

@titanfang

住宅の内見

 不動産屋に連れられてたどり着いた物件は、国道沿いの二階建てアパートの一階。車通りが多くてうるさいけど安いし、ギター程度は弾いても構わないらしい。駅近いし、向かいがコンビニなのはありがたい。

ロフト付きと言うことで天井は高く、ウォークインクローゼットもあるから、収納も充分。


「こっちがトイレ、でー脱衣所と洗濯機置き場がこちら。希望通り風呂とトイレは別になつてましてー」

「…あの」

「ガスの栓はここにあるので、プロパンガス用のコンロはご自身で用意していただくということでー」

「…あの」

「エアコンはー…

「いやその、


あれ、なんすか?」


 俺の問いかけにあからさまに目を逸らす、不動産屋。家具の無いがらんとした室内。高い天井、明かり取りの窓。時折部屋をよぎっていく、質量を感じさせる振動。


「…はい?」

「いや、ほら。あれ。なんなの?」


 頼むからちゃんと見てくれ。おかしいだろ、どう考えても。長方形の、天井の高い、ワンルームにしては広々とした室内の、ど真ん中をぶち抜くように通っているのだ。パイプ状の何かが。


「ええ、この物件、ちょっと訳アリなんで格安でご提供させていただくんですが。」

「…ちょっと?」


 ちょっとなんだろうか?基準がわからない。とりあえず訳アリと言われれば訳アリではあると思う。ちょうど俺の身長くらい。そうだ多分直立二足歩行で下を通ろうとすると頭頂部が丁度擦れるくらいの高さだろう。そこに通っている。おそらく金属の、直径1メートルくらいはありそうな、蛇腹の、パイプ状の何か、に…アルミホイルを巻き付けたやつ。


「あのさぁ、これ。ちょっと…かなぁ?」

「ええ、多分…当社の物件の中では、比較的ちょっとで安全な方でして」

「ひかくてきちょっとであんぜんなほう」


 思わず復唱した。そんなんあるか。室内を謎の極太パイプが横に貫いてる部屋なんて見たことがない。


「なんでこんな設計に?」

「さぁ?」

「さぁじゃあない。さぁじゃあないだろう?普通の部屋にこんな謎のパイプとか無いから!マジで無いから!お前んとこの物件どうなってんの?これでちょっと?どの辺が?」

「ですので、訳アリですからお安く…」

「うるせぇ!今すぐ外せよこんなもん!」


 思わず掴み掛かろうとした瞬間、凄まじい地響きが部屋の右から押し寄せ、パイプの中を無数の足音が走り抜け、左の方へ通過して行った。地平の彼方へと走り抜ける音が去り、静寂。


「あぁー、良く通っていくんですよねー。全てを破壊し突き進むバッファローの群れ。まぁ、この時限回廊トンネル、全てを破壊し突き進むバッファローの群れが100群れ通っても大丈夫なイナバ時限回廊社製なんで、大丈夫ですよー」

「ごめん、他社当たるわ」



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