第四章 4

 ああ、嘆かわしい。昨夜は遅くまでお父様は帰らず、こちらは待ちくたびれて、いつの間にか眠ってしまった。

 あちこちで酒の匂いが漂い、無意味な祝砲が撃たれる。ここ数か月、毎晩のように。

 それでもやがて朝になれば、あらゆる憂いは洗い清められるのでは、という望みも虚しく。

 噂好き連中の口からは、もう父は国外へ逃亡したのだとか、いや何かをしくじったせいで消されたのだとか。

 それに、妙なものを大きな鍋で煮ていたのだとか、変な声色でガアガアと喚くようになっていただとか。中には壁に投げつけられて、挽肉になっているのを目撃したという話まで。

 それもこれもハムレット様の仕業なのだと、意味ありげに囁く声すら混じっている。


 今朝になって、そのお父様から手紙が届いた。

 ランラララ、ランラン!! 






 ☆☆☆☆☆

 ☆☆☆☆☆







 いや楽しいはずがない。

 どうしてこんなことを書いてしまうのだろう。この手がチョイチョイと、つい星の絵まで描いてしまった。


 手紙には「城を不在にしていたが、そろそろ戻る」のだと、確かにお父様の筆跡で書いてあった。これはいったい、どういうつもり? 

 死んだとか、殺されたとか、あるいは逃亡したと言われている父が、私を安心させるために送ったの? 

 ハムレット様のお手紙を、父が持ち出して見せまわったことに腹を立てて、ハムレット様から恨まれているのかしら? 

 根に持っているの? 

 これが質の悪いおふざけの手紙なのだとしたら?

 いよいよ本当にご乱心!

 狂気! 

 怖い! 

 素敵!


 あら不思議。

 何故なのかしら。

 落ち込み続ける心が、どういう訳か。クルリとトンボ返りをして、妙に、妙に浮き立ってきた。

 何だかこう、浮き立つ気持ちが内側から体を突き破って、暴れまわりながら表に出てしまいそうなので、なってしまってきたので、なので、ペンを持つこの手も、楽しい! 

 じっとしてはいられないのです。







 なはははははは! 

 ☆☆☆☆☆


 笑いながら、大きく足を上げて踊りながら、楽器を手にして天に向かって歌いたくなる、背中から天使の羽根が生えてきたような、そんなそんな、そんな朝です。

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