エルシノア城の三蔵法師とその一行
目
序章 1
(深い森の奥、ハムレットのみ)
ハムレット ああ、何ということだろう。昼も夜もただ、あの城にいる忌まわしい奴らの言動に悩まされてばかり。疑いと苦しみで頭も体も重い、外を歩いてみれば手足までもが重くなる始末だ。
思い悩むあまり、とうとう国の外れに近い森の奥にまで来てしまった。喪中だというのに、一人で狩りに出るふりをして城を発ち、馬は森の手前につないだまま。
こうまで遠く離れても、奴らの笑い声が耳に響いて残っているようだ。しかも、その「奴ら」には自分の母親までが含まれていることを思うと、耳から反吐が漏れそうだ。
暗い暗い、黒い森、ここにただ一人でいても、後ろから誰かの足音が小さく聞こえてくるような気がする。
もしかすると全ては気のせい、取り越し苦労に過ぎないのだろうか。深い森の緑に抱かれ、本当は何もない、ただの木の影をお化けだと思い込み、怯え、震えているのがこの自分なのだろうか。
また足音が。
これは空耳だろうか、いや、今度は向こうから馬のひづめの音、確かに聞こえてくる。そして大柄な誰かの足音も数人分、近づいてくるようだ。
運命の足音だろうか。
それとも、陽の当たらない森の奥で、奴らの一味がいまにも消えてしまいそうなこの命の灯を消してしまおうと襲いかかる、悪だくみなのか。
あるいは……。
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