第6話 テロリスト

 魔王。

 私はかつて、そう呼ばれた。

 悪魔を率いて、世界を征服しようとした。

 その目論見はあと一歩の所で、人間側の切り札であった。勇者達に阻まれた。

 命を絶たれる直前、最後の力で逃げる為に空間移動の魔法を使った。

 全ての力を捧げ、放った魔法は想像を超えた力を発揮したようだ。

 気付けば、異世界に居た。

 私は見知らぬ世界の森に居たのだ。

 魔力は思ったように回復しない。

 どうやらこの世界には魔力の素になる魔素が少ないようだ。

 魔法を使えないわけじゃないが、かつてのようには使えない。

 幸いにして、私の戦闘能力は高いままだ。

 森の中を彷徨っていた時に私は彼らと遭遇した。

 武器を持ち、野蛮な連中だった。

 彼らを私を見て、盗賊のように襲い掛かって来た。

 見知らぬ武器を持っていた。

 遠くの者を殺せる武器だ。

 弓よりも遠く、強力な一撃を放つ武器。

 一瞬、苦戦したが、私の戦闘力の前に彼らは屈した。

 この世界の事は何も解らなかったが、彼らから情報を集めた。

 そして、彼らを使役して、私はこの世界に再び、私の国を再建する事を決めた。

 この勇者無き世界で。


 魔王 ヴェルゼス

 テログループ『悪魔の牙』のリーダー。

 悪魔の牙の目的はヴェルゼスを頂点とする国家の成立。そして、世界支配が目的。

 資金集めのためにどんな非道も行う。

 武器・麻薬密造、密売。人身売買。賭博。拉致に殺人、強盗、売春。

 どんな非道もやった。それは彼が魔王と呼ばれた所業であり、彼はその魔王と言う名を好んだ。

 彼女の勢力は短期間で一気に拡大した。

 多くの武装、犯罪勢力は彼に屈服した。

 常軌を逸した彼の組織の行動は誰にも恐怖を与えた。

 小国などでは警察も軍隊もそして、権力者達も彼を畏怖した。

 事実、彼は独裁者となっていた。

 だが、彼は満足していなかった。

 彼が支配した国々は所詮、後進国。未開発の小国ばかりなのだ。

 情報を知れば知る程、先進国の文化と文明をこの手に欲した。

 彼はどこまでも貪欲なのだ。

 そんな彼の元にも異世界からやって来た者は集まる。

 そして、力を求め、彼の支配下に入る者。

 着実に彼はこの世界を蝕みつつあった。

 

 異世界からの来訪者。

 彼らの存在は秘匿されるのが慣例であった。

 それは彼らの力に原因があった。

 彼らの多くは物理法則を無視した力を有する。

 それらを独占しようとする為政者達の思惑により、秘匿され続けている。

 ヴェルゼスも魔法を操る。

 魔法は自らの魔力が自然に働き掛け、影響を与える力。

 すなわち、雷を落としたり、風を吹かせたり、水を出現させたりする。

 小規模ながら天候を操る力とも言える。応用次第で万能な力となる。

 空気の密度を変えれば、強固な空気の壁となり、銃弾さえ通さない。

 そんな力の持ち主であった。

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現世界に転移してしまったエルフは精霊術と狙撃技術で傭兵になる。 三八式物書機 @Mpochi

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