終焉のサクリファイス4 鮮血屍者編 後編
冬城ひすい
♰Chapter Mem:幻影回顧録『純血王位』
春の
純白の可憐なる花よ。
夏の
薄桃の温和なる花よ。
秋の
薄紫の華麗なる花よ。
冬の
純白の優美なる花よ。
四季折々の美しき風景は付属に過ぎず。
威圧的な石造りの古城ですら付属に過ぎず。
数百年もの長きにわたり、彼の地を統治し、つい今の今に至るまで。
あらゆる神秘を司る純血種の吸血鬼こそが全てであった。
それは正しく永劫の時を紡ぐ、黄金時代であった。
しかし移ろいゆく時代とは陽炎のように儚く、脆いもの。
探求する『永遠』と『調和』は全てに当てはまるものではない。
半永久的に生きる吸血鬼と、精々が百年足らずしか生きられない人間。
人間は棲み分けの誓約すら時間と共に守るものなどいなくなった。
魔女狩りと称した剣が、槍が。
異端者狩りと称した石が、火が。
純血種も混血種も、等しく灰に変えた。
美しき花園も、威風堂々たる巨城も全ては無に帰した。
純血種の二鬼である我とあの男。
真祖の正統でありながら吸血鬼と人間との共存を謳ったあの男を信じたばかりに。
妄言だと断じることのできなかった我の至らなさのために。
我以外の吸血鬼は全て滅亡した。
そして奴自身ですら信じていた人間どもに串刺しにされて灰に帰した。
復讐することも叶わず、怨嗟を吐くことすら許されず。
そんな時に奴が何度も逢瀬を重ねていた人間の女がいることを知った。
女は幼子の手を優しく、それでいて強く握っていた。
生まれてわずかの命。
まだ何が起こっているのかも理解していないのだ。
――この子こそ”
真祖の血統を穢し、簒奪して生まれた災厄の忌み子。
笑ってしまったよ。
ああ、嗤ってしまったよ。
赦しはしない。
赦せるはずもない。
だから黒檀の吸血鬼がものを分かる年頃になるまで耐え忍んだ。
我が裏切者を、その子を絶望に染め上げてからこの手でくびり殺すために。
そして今。
精々が五百年しか生きていない混血種と、七百年以上を生きる純血種が邂逅し。
歪んだ憎悪と昏い復讐に焦がされて――。
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