【コント】内覧会

あそうぎ零(阿僧祇 零)

内覧会

夫 「すみませんねぇ、こんな深夜に。夜の雰囲気を知りたかったもので」

営業マン 「いえいえ。弊社は、お客様ファーストをモットーとしておりますから」

妻 「気に入ってますのよ、このお家。でも、実際に見ておきませんとね」

娘 「お腹空いたよー」

妻 「さっき食べたばかりでしょ」

娘 「このおにいちゃん見てたら……」

妻 「コラ! お行儀悪いこと言わないの」

夫 「備え付けのカーテン、100%遮光ですか?」

営 「すみません。調べて後ほどご連絡します」

妻 「ねえ、あなた。あの天窓、意外に大きいわね」

営 「奥様。あの天窓があるので、北側の部屋も明るいんです。特に、朝は日の光が燦燦と降り注ぎます。この家の売りの一つです」

妻 「おカネかかってもいいですから、塞いじゃって下さい」

営 「えー? 塞ぐんですか?」

夫 「天窓より、地下室が気に入ってます。日本家屋では珍しいでしょ?」

営 「おっしゃるとおりです。趣味部屋にしたり、ワインセラーを置いたりと、いろいろな楽しみ方が出来ますよ。楽器を演奏しても、近所迷惑になりませんし」

夫 「安眠できそうだな」

営 「こちらの階段を下ります。どうぞ」

娘 「ママ。まだダメなの?」

営 「お嬢ちゃん、夕ご飯まだ食べてないの?」

娘 「うん。ヨダレ出てる」

妻 「メッ! 変なこと言うんじゃないの」

娘 「……」

夫 「ほう。棺桶3つは十分置けるな」

妻 「そうね」

営 「あのぅ、地下室に棺桶を置くんですか?」

夫 「そうですよ」

娘 「イケメンで美味しそう。まだなの?」

妻 「もうすぐだから、黙ってなさい」

営 「棺桶って、まさか本物じゃありませんよね」

夫 「本物ですよ。昼間、私たちがそこに入るんです」

営 「冗談きついですよ」

妻 「冗談なもんですか」

夫 「じゃ、そろそろいただくとするかねぇ」

娘 「ヤッター! 一番はあたしよ。パパ、ママ、おにいちゃんを押さえてて」

営 「何するんですか!」

夫 「あんたの血を夜食にするのさ」

妻 「あなたも仲間になれるのよ」

営 「やめてくれー!」

娘 「ガブリ」






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【コント】内覧会 あそうぎ零(阿僧祇 零) @asougi_0

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ