モルグ街の殺人

鷹山トシキ

第1話

 パリに長期滞在している、名前が登場しない語り手は、ある日モンマルトルの図書館で、没落した名家の出であるC・オーギュスト・デュパンという人物と知り合う。語り手は、幅広い読書範囲と卓抜な観察力、分析力を持つデュパンにほれ込み、やがてパリの場末の古びた家を借りて一緒に住むことになる。デュパンは、ある晩、街を歩いているとき、語り手が黙考していたことをズバリと言い当てて語り手を驚かせたが、その推理過程を聞くと非常に理にかなったものであった。


 そんなとき、ある猟奇殺人の新聞記事が二人の目に止まる。「モルグ街」のアパートメントの4階で起こった事件で、二人暮らしの母娘が惨殺されたのだった。娘は首を絞められ暖炉の煙突に逆立ち状態で詰め込まれていた。母親は裏庭で見つかり、首をかき切られて胴から頭が取れかかっていた。部屋の中はひどく荒らされていたが、金品はそのまま。さらに奇妙なことに、部屋の出入り口には鍵がかかっており、裏の窓には釘が打ち付けられていて、人の出入りできるところがなかった。また多数の証言者が、事件のあった時刻に犯人と思しき二人の人物の声を聞いており、一方の声は「こら!」とフランス語であったが、もう一方の甲高い声については、ある者はスペイン語、ある者はイタリア語、ある者はフランス語だったと違う証言をする。


 デュパンと語り手は、この猟奇殺人事件に興味を持ち、自らの推理力を試すことに決めた。


 まず、デュパンは事件現場であるアパートメントを詳しく調査することになった。彼は、部屋の中で起こった荒らしと殺人の手法から、犯人が慎重かつ冷静であり、緻密な計画のもと行動したことを推測した。そして、鍵がかかり、窓には釘が打ち付けられていることから、犯人は外部からの侵入を防ぐための工作をしていた可能性を考えた。


 次に、異なる言語で聞かれた声について考察した。デュパンは、それぞれの言語において犯人が声を出したことから、複数の人物が関与している可能性を示唆した。さらに、声の高さや言語のバラエティから、犯人グループは国際的であり、計画的に行動していたことを推測した。


 その後、デュパンと語り手は、事件の現場周辺を徹底的に調査し、証言者や近隣住民との会話を通じて情報を収集した。彼らは、被害者の母娘が最近、高額の遺産相続を受けたことや、彼らの生活様式についての詳細な情報をつかみ始めた。


 事件の謎を解き明かすため、デュパンと語り手は、犯人の心理や動機を深く掘り下げ、モルグ街の事件の真相に迫っていく。

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