生者と死者の境界線
風間きずな
プロローグ
夏休み、僕はお母さんの実家がある鳥取県境港市に帰省していた。
自宅のある島根県松江市から近いこともあり、小学4年生になった今年は初めてひとりで来た。
お父さんもお母さんも仕事だからね。
家で留守番してるより、おじいちゃんおばあちゃんの家にいるほうが外に遊びにいったりできるから楽しい。
それに境港はゲゲゲの鬼太郎の作者水木しげる先生の出身地で、駅前は水木しげるロードといって、妖怪のブロンズ像が立ち並んだり、不思議でおもしろいものがいっぱいあってワクワクするよ。
明日が10歳の誕生日ということもあり、離れている時の連絡用にとスマホをプレゼントにもらった。
やったぁ
ウォーキングタイプの位置ゲーアプリも入れてもらって、キャラクターを育てるのがめちゃめちゃおもしろくて夢中になる。
今年の夏は退屈知らずだ。
あっ、もちろん宿題もやらなきゃ。
やりたいことも、楽しみもいっぱいある。
そしてもうすぐ9歳から10歳へ。
桁がひとつ増えると、なんだかすごく大人になった気分だ。
帽子をかぶり肩に下げた水筒でこまめに水分補給しながら、お昼ご飯食べたあとからずっとスマホのゲームをして歩きまわっていた。
気づけばもう夕方。
さすがに足がパンパンでクタクタだ。
暗くなる前には戻っておいでと、おばあちゃんに言われていた。
モンスターを集めたりだいぶ成果をあげたので、僕はうちに帰ろうと夕日を背に歩き出すと、後ろから声をかけられた。
「ねぇ、僕のスマホ知らない?」
「えっ?」
振り返ると、僕より少し小さめの男の子がいた。
「僕のスマホ見なかった?たぶんこの辺でなくしたと思うんだけど…」
辺りを見回しても、スマホらしいものはない。
「さぁ…見てないよ」
「困ったな…誕生日のプレゼントに買ってもらったばかりなのに」
「そうなんだ」
僕も誕生日プレゼントにスマホを買ってもらったばかりだから、なんだかその子がかわいそうに思えた。
「ねぇ、一緒に探してくれないかな?日が暮れる前に見つけないと、僕家に帰れなくなっちゃう」
ひとごととは思えず、僕は一緒に探してあげることにした。
「ここにないとしたら、今日行った他の場所を探そうよ」
「わかった、じゃあまずは近くから行こう」
僕たちは、茜色の町を歩き出した。
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