黒血に芽吹く

シンドいちゃん

第1話 プロローグ

「はぁ、はぁ…」

ガムシャラに階段を駆け登っていた。『ガチャッ、バンッ』僕は階段を登り切るとそのままの勢いでドアを勢いよく開けて叫んだ。

「おい、■■■!!バカなことは寄せ。」

叫んだ先には一人の少女がこちらを背にして立っていた。

「早かったね。もう少しかかると思ってたから少し驚いたよ。」

少女は笑いながらそう言った。

「本当は朱く綺麗に咲いた所だけ見てほしかったんだけどなぁ…」

そう言うと少女は一歩前に進んだ。

「意味分かんない事言ってんじゃねーよ。僕が必ず何とかするから。」

そう言い近づこうとした時

「来ないで!!…お願い、これ以上近づかないで。」

怖れ怯え怒りに哀しみそういった感情を込めたような声で少女は叫んだ。

「もうだめなんだよ。君に縫ってもらった傷からも溢れ始めた。根が蔦が花が私を喰らうの。」

そう言いながら少女は、一歩また一歩。足を踏み出し、とうとう柵までやってきて。

「良いことなんてなかった。幸せも落ちてなかった。見つけて手にできたのは癒えない傷に苦痛の日常だけだった。」

そして少女は柵を乗り越えるとこちらを振り向き続けた。

「あっでも一つだけ確かにあった、君に出会いそして君と最後の瞬間を迎えれたこと」

振り返った少女には無数の茎が傷から生えておりツルが全身に絡みつき棘は喰い込み少女の悲痛の表情とは別に満面の笑みを浮かばせるように黒い花が咲き誇っていた。

「…」

僕は何もいえなかった。決心した少女の顔に先程の叫びが僕の体を、心を縛り付けて動けなくしてしまっているように感じた。

「だからもういいの。私の無価値で無意味で苦しみしか無かった人生…でも今だけは最高の最後だからね。」

そう言うと少女は初めて出会ったときのようなすべてを覆い隠す笑顔浮かべて

「ありがとう。」

そう言うと少女は後ろに倒れていった。まだ夏の暑さが残る日の夕暮れの一時に少女はこの世を後にした。

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