【ランダムチート】で異世界を爆速攻略するRTA女子高生

北 流亡

異世界01.爆速でラストダンジョンを攻略する【獲得ゴールド10000000000000000倍】女子高生

 残り時間は、3分であった。


 薄暗い部屋。足元で光る魔法陣。こちらを見つめる中世ファンタジーな格好の人間たち。

 その視線の先に、ブレザーを着た女がいた。


 ブレザーの女——龍造寺りゅうぞうじ理空りくは、瞬時に状況を理解した。


「魔王を倒せば良いんだな?」

「そ」


 その通りです。理空の問いにそう答え終わる前に、鎧に身を包んだ男はその場に崩折れた。

 理空が、手刀を延髄に叩き込んでいた。足元に、ひと抱えほどの金貨が転がっていた。


「ゆ、勇者様!?」

「勇者様が乱心されたぞー!」

「者どもー! であえであえー!」


 王の間に30人ほどの兵士が駆けつける。武器を構え、理空に飛びかかる。風。部屋中を駆け巡る。全員が、倒れていた。理空が、全員の延髄に手刀を叩き込んでいた。


 金貨が、足元に積もっていた。床が見えなくなるほどだ。


【獲得ゴールド10000倍】


 これが、この世界で与えられた異常能力チートであった。

 それが、兵士達との戦闘を経て


【獲得ゴールド10000000000000000倍】


 に、成長していた。


 理空は、王の首根っこを掴んだ。動きに、一切の躊躇はない。理空はそのまま走って逃げる。王の側近達は、ただただ唖然としていた。


 武器庫に入った。兵士達が使う装備が隙間無く並べられており、非常に狭い。


「ゆ、勇者様、ど、ど、どうか命だけはお助け……」


 王は理空に懇願する。

 手刀。王の延髄に叩き込んだ。ぎりぎり気絶する程度の力だ。金貨が、湯水のように湧き出る。

 部屋は、あっという間に金貨で満たされた。それでも、金貨は湧き出ようとした。


「あばばばばばばばば」


 理空は、金貨と壁に挟まれ、激しく痙攣する。

 際限なく増える金貨。部屋を埋め尽くしてもさらに膨張する。そして——


 部屋が、空間ごと破裂した。

 理空は、その勢いで、時空のかなたまで飛ばされる。


 黒い大地が広がっていた。世界のにある、魔族だけが住まう暗黒の世界だ。本来であれば、魔王の配下が封印している「次元の扉」を通らなければ行けない。


 広大な大地の中に、洞穴の口がぽっかりと空いていた。

 ここが、この世界における「ラストダンジョン」の入口のようだ。この洞窟の地下100階に魔王がおり、倒すことによって元の世界へと帰ることができる。

 理空は、大きく息を吸う。


「我は勇者ぞ! 魔王軍の雑魚ども、かかってこい!」


 叫んだ。魔王の配下が次々と集まってくる。

 その数、666体。理空は2秒で倒した。


 金貨が地表を埋め尽くした。

 魔王軍666体×100枚×10000000000000000×金貨1枚あたりの重量30g=およそ20兆tが瞬時に発生する。


 金貨は地下1階〜99階を一気に貫いて100階まで落ちた。

 魔王は死んだ。おそらく、自分が死んだことにすら気がついていないだろう。


 この時点で2分50秒。

 理空の目の前に、通学路が広がっていた。


 理空は駆ける。チャイムが、鳴り始めていた。

 今日は高校の入学式だ。さすがに初日から遅刻はしたくない。


 理空は校門を突っ切ると、校舎の壁を蹴り上がり、3階まで登る。

 理空は、舞い降りるように、窓から教室に入った。


「おはようございます」


 クラスメイトが唖然とした顔で、窓から現れた理空を見た。教師も同様だ。

 理空は上履に履き替えると、誰も座っていない席を見つけ、着席した。全員の視線が、理空の一挙手一投足に釘付けになっていた。


「え、ええと、これから入学式なんですが……」


 我に帰った女教師が、冷や汗を拭きながら話しだす。

 理空は、間に合って良かったと思った。


 これから始まる高校生活3年間の幸先は、良い。

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