第31曲 サク野外フェス特有の一体感、そして……:ナガノアニエラフェスタ
九月終盤の土日の二日に渡って、長野県佐久市の駒場運動公園にて催される、アニメ・ソングの野外フェスティバル「ナガノアニエラフェスタ」。通称「アニエラ」の初日に書き手は、二〇一九年以来、五年ぶりに参加した。
書き手がアニソンのイヴェンターになってから、かなりの年月が経過しているのだが、楽しかったイヴェントの一つとして、この野外フェスを挙げる事がある。
それは、長野県の自然の中という開放感だけがその理由ではない。
アニエラでは、観客席エリアへの入場は、原則並んだ順なので、〈現場〉に早く行けば行くほど、自分の好きな位置に陣取る事が可能なのだ。
たしかに、開演までに五時間待つのは無駄のように思われるかもしれないが、〈おし〉の為に待てるという事は、その熱意の表われだとも言えるだろう。
今回、正式な列形成は午前八時、開場が十一時、開演が十二時、終演が二十時で、列形成から終演までは、なんと〈十二時間〉、つまるところ、軽い気持ちでは、半日オーヴァーのオール・スタンディングには耐えられはしないだろう。
ただ実を言うと、アニエラでは、演者の出演順のタイム・テーブルが事前に告知されるので、ある程度のスケジュール調整ができたりもする。
さて、アニエラの参加者は、たしかにアニソンが好きだとしても、出演者の全てを等しく〈おし〉ている分けではないのは当然の話で、かくゆう書き手も、二〇二四年のアニエラ初日のメイン・ステージ出演の十組中、目当ては「TRUE」さんと「ASCA」さんの二組だけであった。
だがしかし、最〈おし〉以外の、普段あまり〈現場〉でライヴを観る事のない演者のパフォーマンスも十分に楽しむ事ができた。
つい先ほど述べたように、この野外フェスの入場は並んだ順なので、無論、最前エリアは早く来たヲタクが陣取る事になるのだが、同じ人間がずっと最前を独占しているのではなく、最前部は、演者ごとにヲタクの入れ替えが起こる。つまり、リレー式のフェスで、かつアニエラでは出演順も分かっているので、次に歌唱するのが自分の〈おし〉ではない場合、その演者のヲタク達に、最前にいた人間が一時的に場所を譲る、という入れ替えが為されるのである。
当たり前の事なのだが、〈在宅〉して家などでCDを聴いているだけでは分かり得ない、〈現場〉で作り上げられていったその演者のライヴ特有の〈ノリ〉という物があって、こう言ってよければ、ライヴとは、実に専門性が高いもので、この場合の専門家とは、その〈現場〉のヲタクの事である。
事実、そういった専門家が最前部を占める事によってしか出す事のできない、〈現場〉の雰囲気という物が確かにあって、二列目以降の、非専門のアニソン・ヲタク一般は、その演者特有のノリ方を熟知してはいないとしても、それなりの対応力は持ち合わせているので、最前の動きを模倣する事はできる。その前方を後方のライトなヲタクが真似し、やがて、最前の熱意が会場全体に波及してゆくものなのだ。
要するに、アニエラが楽しいのは、ステージでパフォーマンスをしている演者の最前のヲタクが〈現場〉をきっちり作って、彼等の熱量が後方に波及してゆき、それが会場の一体感となる点にある分けだ。
こういった一体感とは、座席や立ち位置指定のライヴでは決して起こり得ない。
というのも、その演者のヲタク以外は、たとえ曲を知っていたとしても、その〈現場〉特有のノリ方は分からない場合が多く、残念ながら、彼等には〈現場〉が作れないからだ。また、運よく、その演者のヲタクが数名最前にいたとしても、数が少ない場合、会場全体にノリを波及させるにはパワー不足なのである。
だから、こう言ってよければ、会場の一体感とは、演者ごとの最前の入れ替えが引き起こしているのだ。
言い換えると、アニエラの楽しさとは、最前のヲタクが起点となった会場の一体感に起因している、と書き手は思っている。
だから、「TRUE」さんや「ASCA」さんで最前を陣取る事になった書き手は、自分が楽しむのは勿論の事、アニエラという楽しい現場の創出の一助に成れたら、とも思うのであった。
*
書き手は、諸事情で初日だけの参加になってしまったのだが、長野で二日目が催されている時間帯、実家でネット・サーフィンをしていた。
その際に、SNSにて衝撃的なニュースを知ったのである。
二日目のアニエラの会場内で、刃物による傷害事件が発生し、その結果、イヴェントは、序盤にて中止せざるをえなくなってしまったのである。
前年は悪天候によって、今年は事件によってアニエラは中止になってしまった。
だが、アニエラは会場全体が一体になれる、本当に素晴らしいフェスなのだ。
事件のせいで安全面という難しい問題に直面してしまったのだが、この状況に負ける事なく、来年以降も開催を継続していただきたい、と書き手は念じてやまない。
〈参加イヴェント〉
『ナガノアニエラフェスタ』
日時:二〇二四年九月二十一日・土曜日、開場正午、開演十三時、終演二十時
会場:長野県佐久市・駒場運動公園
〈参考資料〉
〈WEB〉
『ナガノアニエラフェスタ』、二〇二四年九月二十九日閲覧。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます