イヴェンター・ライジーンはアニソンやライヴ現場をかく語りき（原則、毎週水曜日更新）

第09曲 二つのＯＰのアンサンブル：ＴＲＵＥ「ＲｅＣｏｄａ」「ブルーデイズ」「アンサンブル」

　今年の二月末にデビュー十周年を迎え、アーティスト活動十一年目に入ったアニソン・シンガー「ＴＲＵＥ」さんは、二〇二四年の春クール、すなわち、今期、放映されている約八〇本のＴＶアニメのうち、『響け！ユーフォニアム３』（以下『ユーフォ』と略記）と『転生貴族、鑑定スキルで成り上がる』（以下『鑑定スキル』と略記）という二本の作品のオープニング主題歌を担当している。

　『ユーフォ』は『ＮＨＫ　Ｅテレ』で夕方の五時から、『鑑定スキル』は、『CBC／ＴＢＳ系』全国ネットの「アガルアニメ」枠で二十三時半から放映されているので、こう言ってよければ、今期の日曜日は〈ＴＲＵＥの日〉なのだ。

　ちなみに、両作品ともに四月七日から放映が開始されたのだが、『ユーフォ』の第一話は、ＯＰもＥＤもない特殊編成で、『鑑定スキル』の第一話は、ＯＰこそＴＲＵＥさんのテーマ曲が通常通りに流れたものの、ＥＤ無しの特別編成であった。したがって、語の全き意味において、日曜が真の意味でのＴＲＵＥの日となったのは四月十四日からであった。

　そして、この今期放映の二作品をひっさげた、ＴＲＵＥ名義での二十枚目のシングルが四月二十四日の水曜日に発売されたのである。

　このＥＰは、いずれの曲ともにＯＰである故なのか、どちらかをカップリングにするのではなく、両方を表題曲にした、いわゆる〈両Ａ面〉としてリリースされた。

　その発売前に開催された『アニメイト』の東京と大阪での二つの〈予約会〉を経て、フラゲ日の二十三日火曜日、リリース日の二十四日水曜日、二十七日土曜日、そして二十九日の祝日の月曜日には、関東各地でリリース・イヴェントが催され、書き手も、そのうちの三つに参加したのであった。

　今回のリリース・イヴェントでは、うち二つのイヴェントが、アーティスト盤と『ユーフォ』盤、および『鑑定スキル』盤、すなわち、全形態を購入すれば、優先エリアでの観覧とサイン会に参加でき、うち二つのイヴェントでは、アーティスト盤とアニメ盤のいずれかを購入すれば、抽選会に参加でき、当選すれば、前方での優先観覧とサイン会に参加でき、外れた場合でも、サインは無しなのだが、後方のフリーエリアで観覧できる、という方式が採られていた。

　運を持ち合わせていない書き手は、仕事などで会場への到着がギリギリになったり、抽選に当選できなかったりして、残念ながら前方の優先エリアでの観覧は叶わなかったのだが、それでも、今回のイヴェントで合計十二曲のＴＲＵＥさんの生歌唱を堪能する事ができたのであった。

　リリイヴェでは各会場で四曲ずつ歌唱されたのだが、そのうちの二曲は、両Ａ面になっている「ブルーデイズ」と「ＲｅＣｏｄａ」で固定だったのだが、最初の一曲目と最後の一曲は会場ごとに変更された。

　つまり、予約会も含めた、今回のＥＰの発売記念イヴェントは六か所で催されたのだが、その六か所目、四月二十九日の祝日の開催地となったのが、川崎のチッタの噴水広場であった。

　今回の全六か所のイベントでは、東京と大阪のアニメイトでは五曲ずつ歌唱されたので、重複があっても延べ二十六曲が歌唱された。その発売記念イヴェントにおける千秋楽での最後の一曲として、いったい何を歌唱しようか迷った、と、ＭＣにおいて、ＴＲＵＥさん自身も語っていたのだが、その最後の一曲として、ＴＲＵＥさんが選んだのが「アンサンブル」であった。

　「アンサンブル」は、昨年二〇二三年の八月に劇場公開された『特別編　響け！ユーフォニアム～アンサンブルコンテスト～』のテーマ曲として、最後のエンディング・ロールにて流れた曲である。

　作品のサブタイトルにも入っている「アンサンブルコンテスト」とは、現実においても行われている『全日本アンサンブルコンテスト』をモチーフにしている。そもそも「アンサンブル」とは、吹奏楽においては、大人数ではなく、小規模な合奏を意味しているのだが、実は、この用語は、〈一緒に〉を意味するフランス語の副詞の〈ｅｎｓｅｍｂｌｅ〉に由来している。

　発売記念イベントの最後の曲として「アンサンブル」が歌唱された事は、両Ａ面である「ブルーデイズ」と「ＲｅＣｏｄａ」が〈一緒に〉なっている事を意味しているようにも思われる。

　しかし、発売記念イベントの会場で「アンサンブル」を直に聴いた時、その時その場で、この曲が歌われた事には、〈現場〉でしか味わう事ができない意味が込められているようにも思われた。

　「アンサンブル」では、曲の最後に「ラ～ラララ～」とコーラスが入る個所があるのだが、昨年、二〇二三年の夏から初秋にかけての『アンサンブル』のイベントや、数々のフェスやワンマンを経て、参加者が〈一緒に〉にコーラスを入れるようになっており、こう言ってよければ、「アンサンブル」という曲は、演者が歌唱するだけではなく、観客が〈一緒に〉なって〈アンサンブル〉をするように育った曲なのだ。

　だからこそ、ワンマン・ライヴに匹敵する二十五曲も歌われてきた、イベントの最後の曲とするのに、「アンサンブル」は最も相応しい曲だったのではなかろうか。

〈参考資料〉

〈ＷＥＢ〉

　「ＲｅＣｏｄａ／ブルーデイズ【アーティスト盤】」、『Ｌａｎｔｉｓ』、二〇二四年四月三十日閲覧。

　『ＴＲＵＥ　Ｏｆｆｉｃｉａｌ　Ｗｅｂｓｉｔｅ』、二〇二四年四月三十日閲覧。

　『「転生貴族、鑑定スキルで成り上がる」公式ポータルサイト』、二〇二四年四月三十日閲覧。

　『ＴＶアニメ「響け！ユーフォニアム３」公式サイト』、二〇二四年四月三十日閲覧。

　『特別編　響け！ユーフォニアム～アンサンブルコンテスト～』、二〇二四年五月二日閲覧。

〈曲情報〉

　『ＲｅＣｏｄａ(ＴＶアニメ『響け！ユーフォニアム３』OP主題歌) ／ブルーデイズ（ＴＶアニメ『転生貴族、鑑定スキルで成り上がる』OP主題歌)』、レーベル：Ｌａｎｔｉｓ、二〇二四年四月二十四日発売。

　「ＲｅＣｏｄａ」

　　作詞：唐沢美帆

　　作曲：トミタカズキ（ＳＵＰＡ　ＬＯＶＥ）、ｈｉｓａｋｕｎｉ （ＳＵＰＡ　ＬＯＶＥ）

　　編曲：鈴木雅也、曽木琢磨（ＳＵＰＡ　ＬＯＶＥ）、山本拓夫

　「ブルーデイズ」

　　作詞：唐沢美帆

　　作曲：堀江晶太

　　編曲：岡村大輔、堀江晶太

「アンサンブル」、『アンサンブル』、レーベル：Ｌａｎｔｉｓ、二〇二三八月四日発売。

　　作詞：唐沢美帆

　　作曲・編曲：渡辺拓也

　　Ｓｔｒｉｎｇｓ　＆　Ｂｒａｓｓ　Ａｒｒａｎｇｅ：山下洋介