第18曲 魔法科尽くしの発売日:ASCA「紫苑の花束を」

 六月の下旬――

 二〇二四年の春クールのTVアニメ作品も次々に最終回が放映され、六月二十八日の深夜には、二〇一四年にアニメ化が為され、二〇二四年でTVアニメ十周年の『魔法科高校の劣等生』(以下『魔法科』と略記)の第三シーズンが最終回を迎えた。

 今回の『魔法科』のTVシリーズでは、司馬兄妹の高校二年生の一学期から夏休みを経て二学期に渡る「ダブルセブン編」(第一話~第四話)、「スティープルチェース編」(第五話~第八話)、そして「古都内乱編」(第九~第十三話)という三つのエピソードが描かれていた。

 通常OPが話の最後に置かれ、特別仕様になっていた第一話を除いて、第二話から第十三話に至るまでのクール全体を通して、「LiSA」さんの「Shouted Serenade」が第三シーズンのオープニング・テーマを務めていたのだが、これに対して、エンディングは、「ダブルセブン編」(第一話を除く)は、「八木海莉」さんの「recall」が、「スティープルチェース編」に関しては、「三月のパンタシア」の「スノーノワール」が、そして、「古都内乱編」においては、「ASCA」さんの「紫苑の花束を」がそれぞれテーマ曲となり、かくの如く、エンディングに関しては、エピソードごとに、三人のアニソン・シンガーがバトンを繋いでゆく、という、ワン・クールのアニメとしては、実に珍しい形が採られていた。


 そして、「古都内乱編」の最後の話にして、第三シリーズの最終十三話のエンディングに関しては、第九話から第十二話までのエンディングのような、エンディング専用のアニメーションをバックにテーマ曲が流れる類のEDではなく、最終話の物語の中に、「紫苑の花束を」が取り込まれている、といった特殊エンディングが放映された。


 実は、このASCAさんの「紫苑の花束を」が収録されたニュー・シングルは、この最終回の僅か二日前の六月二十六日・水曜日にリリースされたばかりで、その発売を記念したリリース・イヴェントが全国五か所において催されている。そして東京においては、リリース日の当日、二十六日に秋葉原の「アニメイト」においてイヴェントが行われ、かく言う書き手もそのリリイヴェに参加したのであった。


 今回のイヴェントでは、ミニ・ライヴの終了後にCDジャケットへのサイン会が為される事になっていたので、書き手は、『紫苑の花束を』の「通常盤」「アニメ盤(期間生産限定盤)」そして「初回限定盤」、その全てのジャケットにASCAさんにサインをしてもらうべく、三形態全てを購入し、発売日当日のリリイヴェに臨んだのであった。


 ASCAさんの今回のリリイヴェは、名古屋と大阪において既に催されていたのだが、情報によると、その二か所においては四曲が歌唱されたそうで、ニュー・シングルの中からは、「紫苑の花束を」と、そのカップリングの何れか一曲が歌われ、ミニ・ライヴの残りの二曲は、過去曲の中から選ばれる、というスタイルであったそうだ。

 そういった事情もあって、発売日当日は何が歌われるのか期待しながら、書き手も含めたASCAのヲタク達は、入場時の籤引きによって割り当てられた座席に着いて、イヴェントの開始を待つ事になった。


 しかしながら、今回のイヴェント会場は、店舗の七階に位置しており、多分それが理由なのであろうが、運営側から着座での観覧が〈強要〉された。さらに、今回のニュー・シングルが〈BPM〉一二〇程度のミドル・テンポの曲という事も考慮に入れると、秋葉原でのセット・リストは、バラード中心となるような、そんな予想を抱いたのは、おそらく書き手だけではなかったであろう。


 やがて七時になり、ミニ・ライヴが始まる事となった。


 過去二会場のセット・リストを参照してみると、リード曲の「紫苑の花束を」は、名古屋では二曲目、そして「Gift of Life」が三曲目、次いで、大阪では、一曲目が「紫苑」で二曲目が「Stay Gold」という構成であったらしい。

 ところで、東京は、というと、ミニ・ライヴは、カップリングの「Gift of Life」から始められ、二曲目は「紫苑の花束を」といったように、過去二会場とは異なる入り方であった。

 書き手は、発売日にはニュー・シングル収録の三曲を全て歌い、さらに新曲は、〈追憶〉を花言葉にした〈紫〉の花、紫苑を歌った曲なので、ミニ・ライヴ残りの一曲は、梅雨の時期と、〈紫〉の花繋がりで、〈紫陽花〉を歌った「ハイドレンジア」が来るのではないか、と予測していたのだが、実は、この予測は完全に裏切られてしまった。


 しかし、良い意味において、である。


 三曲目に入る前、ASCAさんは、二曲目の「紫苑の花束を」が、『魔法科』のEDになっている事について触れ、この『魔法科』の話を呼び水にして、三曲目に来たのが、『魔法科』の最初のシリーズの第二期のOPとして、「GARNiDELiA」が歌唱した「grilletto」で、この激しめの曲をASCAさんがカヴァーしたのだ。ヲタクたちは、歌い出しのフレーズに合わせて手を前方に伸ばし、テンポアップと比例させるように自らのテンションをあげていったのだ。


 このように、「紫苑」と「griletto」が連続すれば、もはや、ASCAが我々を裏切る事はない。

 はたして最後に歌唱されたのは、ASCAさんがOPを務めた『魔法科』の第二シーズンのテーマ曲、「Howling」であった。

 この曲は、BPMが〈一四三〉という速いテンポの曲調で、さらに、拍が倍になる、いわゆる〈倍テン〉によって、観客のテンションは爆上げされてゆく。また、途中に、ウォーウォーといったコールや、ヘドバンを入れられる箇所もあり、要するに、「Howling」は、瞬時にして、イヴェント会場を一体化させる、ASCAというシンガーを象徴する曲の一つなのだ。


 かくして、『魔法科』の楽曲中心に構成されたミニ・ライヴは大盛り上がりのうちに終わったのだが、惜しむらくは、これでさらに、スタンディング観覧が可能だったのならば、満足度も〈倍満〉であったに違いない、間違いない、と思う書き手であった。

 

〈参加イヴェント〉

 「『紫苑の花束を』発売記念リリースイベント」

  日時:二〇二四年六月二十六日(水)十九時~

  場所:東京・秋葉原・アニメイト秋葉原1号館7Fイベントスペース

 〈セットリスト〉

  M1 Gift of Life(作詞:ASCA、作曲:HALIFANIE、編曲:井上慎二郎)

  M2 紫苑の花束を(作詞:ASCA;minami rumi、作曲・編曲:篤志)

  M3 grilletto(作詞:MARiA;toku、作曲・編曲:toku)*GARNiDELiAのカバー曲

  M4 Howling(作詞:ASCA;Saku、作曲・編曲:Saku)


〈販売CD形態〉*全形態購入済

 「初回生産限定盤 (CD+BD)」、品番:VVCL-2503〜4、価格:一九八〇円(税込)

 「通常盤」、品番:VVCL-2505、価格:一四三〇円(税込)

 「期間生産限定盤(アニメ盤)(CD+BD)」、品番:VVCL-2506~7、価格:一九八〇円(税込)


〈参考資料〉

〈WEB〉二〇二四年六月二十八日閲覧

 『TVアニメ「魔法科高校の劣等生」公式ポータルサイト』

 「6/26発売『紫苑の花束を』発売記念リリースイベント開催決定」(二〇二四年四月二十日付);「TVアニメ『魔法科高校の劣等生』第3シーズン『古都内乱編』ED主題歌 ASCA『紫苑の花束を』6/26リリース!情報まとめ※6/15情報更新」、「INFORMATION」、『ASCAオフィシャルサイト』

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