二〇二四年・冬クール

第01曲 真の三種の神器:TRUE「UNISONIA」「飛竜の騎士」「Divine Spell 」

 二月二十六日、とある一人のシンガーが、アーティスト・デビュー十周年を迎え、その五日後の三月二日には、横浜の「神奈川県民ホール」にて「TRUE 10th Anniversary Live Sound! vol.8 〜ANISON COLLECTION〜」と題されたライヴが催された。

 そのアーティストとは、このライヴのタイトルに歌手名が入っている通り、アニソン・シンガー「TRUE」さんその人である。


 このアーティスト名をもじって、「おつるさん」という愛称で呼ばれる事もあるTRUEさんといえば、この十年の日本のアニメ・シーンにおいて必要不可欠なアニソン・シンガーの一人であった、と言っても、それは言い過ぎではないように思われる。

 というのも、アニメが一期だけで終わる事無く、その後、二期、三期とシリーズ化されたり、テレビ版の後に劇場版が制作された、例えば、『響け!ユーフォニアム』や『転生したらスライムだった件』、あるいは『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』といった、メガヒット・アニメのテーマ曲を歌ってきたのが、他ならぬおつるさんだからである。


 このような言及の仕方をすると、『ユーフォ』か『転スラ』の話をする流れのように思われるかもしれないが、ここでは、「三種の神器」と呼ばれている、TRUEさんの三つの曲を話題に上げる事にしたい。


 その三曲とは、『バディ・コンプレックス』のOPであったデビュー曲の「UNISONIA」(ユニゾニア)と、二〇一六年にリリースされた、『最弱無敗の神装機竜』のOPであった「飛竜の騎士」、および、『レガリア The Three Sacred Stars』のOPであった「Divine Spell」(ディヴァイン・スペル)である。


 何故に、これらの曲が「三種の神器」と呼ばれているかというと、この三曲のうちの何れか一曲でもきたら、ライヴ参加者のヴォルテージが一気にぶち上がり、天井に突き刺さったかのようになる、盛り上がりが約束された伝家の宝刀の如き曲であるからだ。


 誰が呼んだか、その正確な出所を書き手は知らないのだが、これらの三曲を「三種の神器」と呼称したのは、どうやらヲタク・サイドであるらしい。

 『X(旧ツイッター)』の検索窓で、「TRUE 三種の神器」で検索を掛けてみたところ、確認できた限りにおける最も古い「ポスト(ツイート)」は、〈二〇一九年八月〉の呟きであった。


 ところが、である。


 二〇二二年の夏に開催された『アニメロサマーライブ』、通称『アニサマ』の初日においてセミ・ファイナルを務めたTRUEさんは、コラボ曲を含めた二曲を披露したその後に、「飛竜の騎士」「Divine Spell」そして「UNISONIA」という、攻撃力極振りの「情緒を壊すような」曲を連続で歌い上げ、アニソン・ヲタクのHPを根こそぎ削り取ってゆく三連コンボをキメタのである。


 この時、アニサマに一緒に参加していたTRUEヲタクの知人が、大興奮しながら次のように語っていたのが忘れられない。

 『ユーフォ』や『転スラ』そして『エヴァーガーデン』など大ヒットアニメのテーマ曲を数多く歌うようになっている昨今、攻撃力が高めではあるものの、必ずしもヒットアニメの主題歌ではない「三種の神器」が歌われる頻度は低めになっていた。それにもかかわらず、「三種の神器」が〈全解放〉された歴史的瞬間に立ち会えた事には感謝しかない、と。


 さらに、である。

 TRUEさん自身が、アニサマ後のツイートにおいて、「三種の神器」というタグを用いさえしていた。

 すなわち、ここにおいて、「三種の神器」という呼称は、アーティスト公認である事が示された分けなのだ。

 ちなみに、TRUEさんは、自身の「2021年5月30日」付けのツイートで、これらの三曲について言及してはいたものの、ヲタク達が使うようになっていた「三種の神器」というワードを用いてはいなかったので、件の二〇二二年のアニサマこそが、パラダイムの転換点であった、と指摘できるかもしれない。


 その後、アニサマの翌年の二〇二三年二月十二日に、東京の「NHKホール」で開催されたワンマン・ライヴにおいても再び、「三種の神器」の全てが、曲のリリース順に三連コンボで披露されさえした。

 さらに、同年三月十七日付のTRUEさん自身のツイートも興味深く、「三種の神器」というワードを使って呟いてさえいる。


 残念ながら、同年六月二日に「中野サンプラザ」で開催されたワンマンにおいては、「飛竜の騎士」は歌われず、「三種の神器」が全開放されはしなかったのだが、二〇二四年三月の十周年記念日の直後に行われた、直近のワンマンでは、三曲連続ではなかったものの、「三種の神器」の全てが歌われたのだ。

 TRUEさんのワンマンでは、攻撃力高めの、情緒を崩壊させるような曲はライヴの最後のゾーンに置かれる構成になっているのだが、十周年記念ライヴである今回、デビュー曲である「UNISONIA」が最初に歌唱されたため、神器が三連コンボにならなかったのは致し方ない事であろう。


 最後に忘れずに指摘しておきたいのは、この日のライヴのMCにおいて、三種の神器の作曲・編曲に携わっている『Arte Refact』とのコラボで、十周年記念ソングを制作しており、その曲が四つ目の神器になり得る事が、TRUEさん自身によって語られた事だ。


 四種の神器が全開放される日が今から待ち遠しい書き手である。

 

〈参考資料〉

〈WEB〉

 「TRUE」、『Lantis』、二〇二四年三月六日閲覧。

 TRUEさんによるポスト、「2021年5月30日」「2022年8月26日」「2022年3月17日」付、『X(旧ツイッター)』、二〇二四年三月六日閲覧。


〈曲情報〉

 「UNISONIA」、レーベル:Lantis、二〇一四年二月二十六日発売。

 作詞:唐沢美帆、作曲:fandelmale(Arte Refact)、編曲:酒井拓也(Arte Refact)

 「飛竜の騎士」、レーベル:同上、二〇一六年二月十日発売。

 作詞:唐沢美帆、作曲:矢鴇つかさ(Arte Refact)、編曲:酒井拓也(Arte Refact)

 「Divine Spell」、レーベル:同上、二〇一六年七月二十七日発売。

 作詞:唐沢美帆、作曲・編曲:本多友紀(Arte Refact)

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