KAC20242 俺は再会した。内見会はどきわく。
久遠 れんり
第1話 内見会は偶然か必然か
名前を書けば合格できる高校。
二年の時、近くで内見会と言われる行事があるらしく、立て看板が学校の近くに立った。
その看板は、一部の生徒に対して興味を引いた。
「なあ竜一。内見会って何だ?」
そう、彼らの特性として、調べない。
とりあえず。ダチに聞く。
にやっと笑うと、竜一が見せてきたもの。
『奥様シリーズ。昼下がりの内見会。私のすべてを、奥の奥まで。見せてあ・げ・る。♡』
どう見ても、アダルトなビデオのタイトル。
「これだろ」
周りでたむろっている、翔子やゆかりにも見せる。
「うわぁー。引くわ」とか、「えっぐっ。中ってこんなんかよ。内蔵じゃん」と騒いでいる。
竜一は、この手に関して博識で、仮想のネットワーク? VPNとやらを駆使して、エロサイト巡りをしている。ジャマな物が無いらしい。
そして、すかさず肩を抱き引き寄せながら、ゆかりにこう付け加える。
「今晩見てやるから。期待しとけ」
「もうっ。えっち」
そんな甘い雰囲気を、周りに垂れ流す。
夕方見に行ったが、会場は行き止まり。
そこにあるのは造成地と数軒の家。つまり住宅地だ。
「住宅地じゃん」
「馬鹿だな。好平。家を建てると金が掛かる。だからその足しに会場として使うんだよ」
もっともらしい事を、竜一は説明してくれる。
そこに、ゆかりから連絡が入ったらしい。
竜一は颯爽とチャリに乗り、フロントを持ち上げながら、すごい勢いで走って行った。
そんなことをすっかり忘れていたが、専門学校に何とか進学し、一応就職が決まった。
今住んでいる所は、親が勝手にネットで申し込んで、いつの間にか契約をされていた。
面倒だが、会社に近い所へアパートかマンションか住む所を探すため不動産屋へ行った。
不動産屋は、住む所の店へ行くのが鉄則だと親から言われてぽてぽてと会社周りを歩いてみる。
コンビニや、スーパー。
駅など。
ざっと歩いて探す。
「この辺りが良いな」
丁度会社からの通り道。アパートやマンションが建っている。
一般的に、木造とかで二階建てくらいまでがアパート。鉄筋コンクリートなどで三階以上の丈夫なものがマンションらしい。
後コープやハイツ。メゾンなどは、ノリだそうだ。
ハイツは、高台の家という意味らしいし、コープやコーポは共同住宅とかいう意味らしい。メゾンもフランス語で家という意味だそうだ。
適当に、建物に書いてある会社名に電話をする。
「はい。龍神不動産でございます。どのようなご用件でしょうか?」
「あー。すいません。春から入居する家を探していて、住宅の内見を。マンションにそちらの番号があったんで電話したんですが…… えっ物件番号? ああこれですね……」
話は通じ、今から来るという事で持っている。
横に不動産屋の名前が書かれた車が来る。
出てきたのは、ため年くらいの女の子。
「お待たせしました。ええと吉野さんですね」
「そうです」
「現在、入室可能な開いている部屋がいくつかあるので、内見なさいます?」
彼女の口から出た、内見という単語に俺の記憶が反応する。
「内見?」
内見というキーワードに紐付けされていたようで、不意に蘇る記憶。目の前には若い女。
一瞬固まる。
ドギマギしながら返事をする。
「はい。お願いします」
俺が起こした、その反応を見ていて、ふと彼女の顔と雰囲気が変わったのが判った。笑顔ではあるがどこか……。
「どうぞこちらへ」
そう言われて、付いていく。
歩きながら、質問がやって来る。
「四月からは、就職ですか?」
「ええ。そうです」
「この辺りなら、○○工業さんとか、○○精密加工さんとかですか?」
「なんで、会社が?」
「お部屋を貸すには、やっぱり勤め先が重要でしょお」
「はあ。まあそうか。さっき言った○○精密加工です。システムエンジニアで」
「あらっ? まあ。作業員じゃ無く、社員? がんばったわねえ」
この人。なんか、なれなれしくなって、口調も変わってきた。
「先ずは、三階。独身用の1DKは無視って奥へ。2DK。Lは要らないわよね。流石にあそこに勤めててもちょい辛いか。仕方が無い。こちらへどうぞぉ」
目の前で歩くお尻が、心なしかフリフリと誘うように揺れる。
さっき思いだしたあれは、大人のビデオ。
現実は違う。
だが。
鍵を開けて中に入るが、当然電気が来ておらず薄暗い。
「ごめんなさい。ここにブレーカーがあるの。い・れ・て」
彼女は、こちらに背中を向けたまま、やはりお尻が揺れる。
「ああ。判った」
彼女の横に立ち、ブレーカーのスイッチをあげる。
「ふーん。育ったんだ」
彼女は、すぐ横からじっとこっちを見ていたらしい。
ブレーカを上げ終えて、ふと横を見ると、見上げてくる彼女の顔が、まるでキスでも待っているような感じに見える。
「うわった。ごめん」
思わず手を上げたまま、台所の方へ移動する。
「そっちは変わらないか」
彼女が、ぼそっとつぶやく。
「えっ」
「いいえ。何でもございませんわぁ」
そう言って、彼女はふっと前髪を右に流す。
その仕草にふと思い出が蘇る。
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