親友に告ぐ、

葉月結花

第1話


何人いたっていいじゃないかと思う。


抱きしめたり抱きしめられたり

頬に優しく口付けをしてくれる相手なんか

何人いたって足りないんだ。


この真っ黒に腐ってしまったこの街の電球は、待っていたって誰も変えてくれない。


折角枝の先に実をつけたのに、熟れてこぼれ落ちて、潰れて、もうなんかもうイタリアらへんでやってるトマト祭りみたいな景色、もううんざりなんだ。


トマトは大嫌いだ。

お母さんが「肌が白くなるのよ」というから、騙されたふりをして食べてきたけど、食べなくていい世界なら全然食べたくない。



大嫌いなものを大嫌いだと言えない不自由も、大好きな誰かに大声で愛を叫び尽くせない苦しさも、何もかも解り切ってしまって悔しい。


25歳の弥生。

月はまだ明るい。




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