35、割としょうもない「朕が妃にお仕置きした話」 ※おセンシティブな内容を含みます。

※「朕が妃にお仕置きした話」です。

苦手な人は苦手なお話かなと思います。

お話の本筋的にはその1話は読まなくても次に進めますので、苦手な方は回避してくださいませ(すみません!)


 * * *


 ちんが黒貴妃にお仕置きした話をしてやろう。ぜひ聞いてくれ。

 

 先日の毒殺未遂事件だが、『紅淑妃』胡月フーユエ妃は、それほどのことはしておらんかった。

 ちょっと後宮に死にかけの男を連れ込んで、よその妃の宮殿の処刑場に連れ込んだ程度だ。


 問題は『黒貴妃』華蝶カディエ妃だな。

 彼女は正直よろしくなかった。

 冷宮送りにしてもいいぐらいだ……と、霞幽カユウが言ってた。


 冷宮とは、罪を得た妃の幽閉所だ。朕は、できるだけ妃を手元に置いて夫婦関係を続けたい。何度も夜を共にして子供もつくった情があるので。


 そこで朕は「まあまあ。朕が懲らしめるから」と約束し、二人きりでお説教をしたのである。もう二度とするなよ、反省しろよと、それはもう厳しく言い聞かせた。

 玄武の珠の没収した。妃は、反省したようだった。


 「申し訳、ございませんでしたわ……っ、わたくし、反省いたします。ですから、もう……そんなにお責めにならないで……っ」

 

 華蝶カディエ妃はその夜も美しく、玄武の珠を没収されて涙目であった。


 精神的な衝撃を受けて、「もうお話を聞くのが辛いです」とふらふらと臥牀に倒れ込む華蝶カディエ妃。その姿は哀れみを感じさせた。

 あと、朕の中の男心がむくむくと刺激された。

 「あっ、朕だけに弱い姿を見せてくるこの感じ、いいな!」と、思ってしまったのである。


 いや、だって、普段は高飛車で気の強い貴妃だぞ。

 ハオリーハイ萌える! そう思うだろう?

 

「泣いても無駄である。そなたは、してはならぬことをしたのだ。後悔しても、もう遅い」

「……っ」

  

 臥牀しんだいに手をつき、体重を預けると、ぎしっと軋む音がする。

 

 ふわりと香るのは、雄の本能に訴えかけるような甘ったるい香りだ。


 「……」


 だんだんと腰の奥に熱が集まって疼き出す。

 眠っていた朕の中の精鋭兵たちが「出撃の時はまだか」と騒ぎだす――待て、今はその時ではない。

 朕は股間に言い聞かせ、妃を見た。


「我が貴妃よ……」


 薄い寝巻きの裾が乱れ、むっちりとした太ももが眩しくさらけ出されている。

 貴妃ともあろうものが、はしたなきことよ。


 もしくは、誘惑されているのやもしれぬ。

 閨事に持ち込み、説教をうやむやにしようと言うのだろう。

 朕は誘惑に負けんぞ! けしからん太ももは隠してしまおう。

 

 朕は裾をなおして太ももを隠してやろうと思い、手を伸ばした。

 すると、妃め。

 身体をくるりと仰向けに姿勢替えし、「触らないでください」と拒絶するではないか。


「あんっ……触らないでくださいまし」


 触れてもいないのに、その無駄に色っぽい声は何事だ。朕はどきりとした。きゅんっとなった。むらっとした。


「朕を誰と心得る。よいか、我が国には『妻が高慢であれば、まずは言葉で注意せよ。言っても聞かぬなら、寝所で懲らしめよ』という言葉がある。そなたには、丁寧に教えてやらねばならぬようだな」

 

 気付けば、両手がたわわな果実を鷲掴みにしていた。


 ふにっ。

 柔らかい。


 ふよんっ。

 とても、柔らかい。


「あ、あっ、いやでございますわ」

「ほう。そう言いながらも、そなたの両腕は夫に必死にすがりついてくるではないか」

「……っ、当たり前ですわ。だって、わたくし……、主上をお慕いしておりますもの」

「ほ、ほう」

「もう。あまり見ないでください。恥ずかしゅうございます」


 恥じらいに頬を染め、潤む瞳をみせまいと顔を逸らす妃は、凄絶な色香を放っていた。


「……スーッ」

  

 これは誘惑だ。そんな気づきは、頭の端にあった。

 落ち着け、と言い聞かせ、深く息を吸った。甘ったるい香りが胸いっぱいに吸い込まれて、かえって興奮した。


 ほら、朕は前々から、夜になると大胆になる性向があったではないか。

 最近は落ち着いていたが、その反動もあったのかもしれぬ。


「しゅ、じょ、う。お情けを……くださいませ……♡」


 妃が甘えるように胸板に指を滑らせてくる。う、うおお。


「我が妃よ……っ」


 もう止まらなかった。朕は狼さんになった。


 説教とか皇帝の尊厳とか、霞幽カユウ傾城ケイセイもどうでもいい。

 今が大事だ。先のことなんかどうでもいい!


「ふーっ、ふーっ」


 股間の精鋭兵たちが「はよ出撃せい」とせかしてならぬ。

 いざ、ゆかん。

 

「――――参る!」

「あぁっ、その扱いやすさ、大好きです……っ、主上……♡」

 

 高慢な妃の上気した桃肌こそ、我が桃源郷。

 妃、最高。昇仙できそう!

 ところで今「扱いやすい」って言った? 

 

 朕、妃の思惑にハマった? 

 いや、お仕置きしたことにしとこう。

 だって妃も「反省いたします」って言ってたし。

 いいよね? 許してあげて?

 

 朕はそうおも――――「しゅ、じょ、う」ハッ、霞幽カユウ……!

 


 * * *


「主上はお疲れのようです。床にでも転がしておきなさい」


 話の途中で人間の姿になった先見さきみの公子は、主君の喉に丸薬を押し込んで寝かせた。

 

 とても鮮やかな手並みだった。慣れているのだろう。

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