第五十五話 乱入

 街を高速で移動しながら影ダンザと衝突を繰り返す。

 影ダンザは丸裸の俺だ。魔導書は持っていない。刀のリーチの差で、俺が常に先手を取れている。それでも奴に一切ダメージは与えられていない。どうやら俺が思っていた以上に俺は硬いらしい。防御力>攻撃力だということはわかっていたが……想像以上に差がある。実際には防御力>>>攻撃力って感じだな。


 ダメージは与えられずとも、攻撃の衝撃で相手を弾き飛ばすことはできる。なるべく人がいないところ、建物がない所へ飛ばすことでこれだけ激しい戦闘をしているのに街は傷つけずに済んでいる。


 この一分で500~600は打ち合ったか。この影は俺のステータスと戦闘技術をコピーしているものの、成長はしない。この戦いで俺の行動を学習し、対策を立てることをしない。恐らくマスターであるジェイクがいない影響だな。ひたすら襲い掛かってくるだけだ。それでもステータスが高いから厄介なんだけどな。


「やべっ!」


 気づいたら聖堂院の校舎の上にいた。近くには入学式絶賛進行中の大講堂がある。

 俺は影ダンザの腕を掴み、遥か遠方に、大講堂の反対側に投げる。

 空中に投げ出された影ダンザは、肺の方に魔力を溜めた。


――ブレスのモーションだ!!


「そりゃまずいだろぉ!!」


 体の向き的に大講堂に当たる!! 

 喰肉黒衣スカルベールの無いブレスなんて取るに足らないが、それでも鋼鉄を溶かすぐらいの火力は余裕で出る。

 俺は屋根を蹴り、一瞬で影ダンザとの距離を詰めてヘッドロックする。なんとか影ダンザの口を空の方へ向けさせる。

 空に放たれる燃焼ブレス。その反動で俺と影ダンザは穴の空いた風船の如く空を飛ぶ。


「うおおおっっ!!?」


 空中を飛びながらもヘッドロックを続ける。腕で影ダンザの首を締め上げる。

 メキ。と、影ダンザの首の鱗が壊れた。


 おかしい。


 この程度の締め技で壊れるほど脆い鱗ではないはず。まさか、今のブレスで力を使い果たしたのか?

 コイツはユニークスキルで生成された存在。ユニークスキルは魔力をエネルギー源にすることが大多数で、きっとこいつも魔力で構成されている。ジェイク程度の魔力で俺の分身が作れるとは思えないが、きっと奴は自分自身の命も使って(不本意だっただろうが)足りない分の魔力を補ったのだだろう。そのエネルギーがこれまでの戦いで尽きかけて強度が下がっているのではないだろうか。


 つまり、もうコイツは俺並みのステータスを維持できていない。すぐに倒せる。


「ん?」


 ――と、分析に集中していたせいで、俺はポカを起こした。

 ガゴン。と屋根を貫く音が聞こえた時にはもう遅かった。

 俺と影ダンザはブレスの反動で――大講堂の屋根を突き破り、入学式を行っている教壇と生徒たちの間に、落ちた。



「――――――――え?」



 突然の出来事に、固まる一同。

 こんな状況でも空気を読まず、俺の拘束を振り切り、影ダンザは俺から距離を取って構える。

 いち早くコイツを始末しないと全てが終わる――と直感し、周囲を無視して刀を振りぬいた。


「“光填・八爪撃”」


 光の抜刀術。八連撃で影ダンザを文字通り八つ裂きにする。

 影ダンザは息絶え、影が俺の足もとに戻る。


「ふぅ~……なんとかなったか。いやホント、良かった良かった。うん……」


 深呼吸し、現実逃避する俺。

 あー……やばい。最悪だ。ユウキの方を見れん。


「うわ――わああああああああっ!!? 暴漢だ! 暴リザードマンだ!!!」

「刀を持ってるぞぉ!!」

「早く取り押さえろ!!!」


 湧き上がる悲鳴、怒号。俺を取り囲む守護騎士や衛兵たち。

 俺は刀を捨て、諦めたように両手を挙げる。

 さてどうこの場を切り抜けるか。頭の中で思考を高速回転させていると、


「だーっはっはっは! なんだお前! 面白過ぎるだろぉ!!!」


 一人の少年が、衛兵たちを押しのけ前に出てくる。

 金髪の少年――セレ王国の第1王子だ。


「ユーリ様……!?」

「いやいや、くそったれな入学式に出た甲斐があったぜ。最後にこんなとびっきりの見世物が出てくるとはな」


 ユーリ様は俺を指さす。


「案ずるな。お前は必ず、俺が助ける」




 ――――――――――

【あとがき】

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『続きが気になる!』

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何卒、拙い作家ですがよろしくお願いします!

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