第五十三話 分身

 実力を測るため、初手はジェイクに譲ることにした。俺は刀を握った体勢で待機し、ジェイクが行動を起こすのを待つ。


「『影分身シャドウコピー』」


 ジェイクは影を足から切り離す。影が立体化し、ジェイクの横に、ジェイクと同じ構えで立つ。

 真っ黒なジェイク。影ジェイクとでも呼ぶか。コピーしたのはジェイクの肉体のみで、ジェイクが身に着けているものはコピーされてない。あくまで生身のジェイクの分身だ。


「俺のユニークスキルを見ても動じないとはな。ハヅキから聞いていたか」


 ハヅキに見つかっていたことに気づいていたか。


「格下が二人に増えただけだろ。動じる必要がどこにある」

「フフ……口だけで終わるなよ。竜人!!」


 ジェイクと影ジェイクが連携を取って肉弾戦を仕掛けてくる。俺は刀から手を離し、体術で応対する。

 分身だけあって息がピッタリだ。完璧なコンビネーション……個々の体術のレベルも高い。しかし、これは……。


(やりづらい!!)


 苦戦しているわけじゃない。

 俺はコイツから誰をターゲットにしたのか聞き出さないといけないため、そこそこのダメージで無力化しないとならないのだ。間違っても殺すのはダメだ。ある程度加減してコイツを倒さないとダメだ。

 しかし、このレベルの手合いだと中途半端な組み技は抜けられてしまうし、思いっきり組み伏せると絞殺してしまう。

 首筋を打ったり、鳩尾を打ったりして気絶させるには繊細なパワーコントロールが必要だ。これもあまり威力が強すぎると殺してしまう。コイツは一流の殺し屋、ならばその辺りは鍛えてそうだしなぁ。


 殺そうと思えば一瞬で殺せる。ただ生け捕りとなると難しい。なんとも面倒な実力の相手だ。


「……無傷で捕らえるのは無理だな」


 俺は神竜刀を引き抜き、まず影ジェイクの首を斬り落とした。


「え……?」


 ジェイクは抜刀のモーションを一切目で追えてなかった。俺は峰打ちでジェイクの右腕を打ち、右腕の骨をへし折る。


「がっ!!」


 ジェイクは距離を取ろうと足に力を込める――が、力を込めた瞬間に軸足右足の甲を踏みつけ、右足の骨をズタズタに砕く。


「~~~~~っっ!!!?」


 悶絶するジェイク。

 俺は続けて左手のチョップをジェイクの左肩におみまいし、肩の骨を砕く。残る最後の四肢、左足を足払いし、転倒させる。


「悪いな。アンタ、中途半端に強いからこうするしかなかった」


 うつ伏せに倒れるジェイク。


「さて、お前の狙い、企み、全て話してもらおうか。誰をターゲットにしたか、他に仲間は居るのか……」

「ま、だだ……!」


 ジェイクは折れた右腕を伸ばし、俺の左足を掴む。筋肉で無理やり腕を動かしたか。凄まじい激痛だろうに。


「なんのつもりだ?」

「奥の手を……くらえっ!」


 ズン。と足もとに違和感を覚えた。 

 地面を見る。俺の、黒い影が――蠢いていた。


「なっ……まさか!!」

「俺の『影分身シャドウコピー』の対象は……自分だけじゃないんだよ!!!」


 俺の影が俺の足から剥がれ、立体化する。


――影ダンザ。


 俺のコピーが、誕生した。


「お前さんはどうやら規格外に強いらしいが、それでも自分自身が相手な――ら!?」


 瞬間、ジェイクの右腕は破裂した。


「うおっ! なんだ!?」


 血が飛び散る。いきなりのグロ展開。


「ふざけるな……こんなパワーがこの世に存在するのか……!? まずいっ!!!」


 ジェイクの左腕も破裂し、ジェイクは目、耳、鼻から血を流す。


「何者だ……貴様!!?」

「おい! なにがどうなってるんだ!! しっかりしろ!!!」

「……ダメだ……解除、できん……俺の制御できるレベル、じゃ――」


 ジェイクは全身を破裂させ、消えた。そこに、血の水溜まりだけが残った。


「なんだよ、わけわからんぞ!! 誰か説明してくれ!!」


 殺気。

 背後から凄まじい殺気を感じ、振り返る。同時に、頬に黒い拳が刺さった。


「うおっ!?」


 あまりのパワーに5メートルほど後退する。


「おいおいおい……御主人様は死んだってのに、なんでお前は残ってるんだ」


 ジェイクが死んで尚、影ダンザは残っていた。まるで亡霊だな。


「影が相手なら、加減はしねぇぞ!!」


 俺は思いっきり刀を振りぬく。


「“雷填・牙絞”!!」


 影ダンザの首に、渾身の抜刀術を繰り出す。だが、刀は鱗一枚斬れず、首の表面で止まった。


「硬っった! 最大威力の抜刀術だぞ!!」


 影ダンザは体を回転させ、尾で殴ってくる。尾に弾き飛ばされ、教会の壁にめり込んだ。


「……冗談じゃないぞ。クソ」


 立ち上がり、影ダンザと向かい合う。


「まさか、と戦う日が来るとはな」




 ――――――――――

【あとがき】

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