第十一話 魚が染みるねぇ~
食事処ギヴン。
ギンさんの墓参りを終えた俺とライラちゃんは晩飯を食べに来ていた。久しぶりの魚料理をたらふく食べる。
「ずっと肉ばっかりだったから魚が染みるねぇ~」
「どうぞ。好きなだけ食べてください」
すでにライラちゃんには神竜に喰われてからなにが起こったか話した。
あの優しいライラちゃんも、さすがに神竜の肉を食べた俺に引いていた。
「悪いね、ご飯おごってもらっちゃって。お金できたらすぐに返すから」
「お気になさらず」
腹八分目まで食べたところで、酒を挟みつつ俺は話は切り出す。
「さて、どうやってザイロスをギルドマスタ―から降ろすか考えようか」
「リコール(ギルド長辞職命令)の条件はギルドメンバーの80%にリコールに賛同してもらうこと。ですがこれは難しいでしょう。すでにザイロスによって過半数の人間が取り込まれています」
「アイツに人望があるとは思えないが……」
「人望はありませんが実力があります。もしも彼をリコールすれば、その恨みからなにをされるかわかりません。それを恐れて、ザイロスのリコールに賛成する人間は少ないでしょう」
確かにアイツは強いし、それに嫉妬深く執念深い。一度憎しみを抱いたらどんな手を使ってもその憎しみを晴らすために動く。根本がねちっこいんだよな。
「その心配はもうないんだがな。アイツが暴れるようなら俺がぶっ倒すから。つっても、現段階で俺がアイツより上っていう証拠がないわけで……直接対決でアイツを倒せりゃ話は早いんだがな」
「もう一つの方法としてはザイロスのセクハラ・パワハラ・暴力行為をギルド総会に告発する、というものがあります」
ギルド総会。それは全ギルドを取りまとめる機関だ。ギルド法などを定めたのもこのギルド総会である。
ギルド総会の決定・命令はギルドにとっては絶対であり、これに逆らうと他の全ギルドを敵に回すことになる。
「お、いいじゃんソレ。一発だろ」
「ですが……これも難点がありまして」
「またか」
「ザイロスはギルド総会からの特記命令、つまり総会からのお願いを度々聞いていて、総会にはある程度顔が利くのです。ですから、我々如きが告発したところで握りつぶされるのがオチかと」
「もう俺がアイツを闇討ちするのが一番手っ取り早いんじゃないか?」
「それは最悪手です。間違いなくザイロスは総会にダン――ザクロさんを告発しますよ。そうなったらザクロさんは全てのギルドを敵にすることになります」
「手詰まりだな……強さを手に入れても、世の中ままならないことばかりだ」
何もかも力づく、ってわけにはいかないようだ。
「とりあえず、一度この問題は持ち帰りましょう。ザクロさんの戦闘力を計算に入れて、もう一度私の方でも策を考えてきます」
「助かるよ」
「話は変わりますがザクロさん、今日泊まる宿はありますか?」
「あ~、昔住んでた宿からは確実に家賃滞納で追い出されてるからな~。どうしようかなぁ……」
「その、よろしければ私の部屋に来ませんか? もう一人ぐらいなら寝泊りできるスペースはありますよ」
「さすがに年頃のお嬢さんの部屋には上がれないよ。そうだ! ギルド本部の地下に泊まろうかな。あそこ広いし、夜は誰もいないしね」
「そうですか……わかりました」
なぜかライラちゃんは残念そうだ。
「もしもし」
肩を白い手袋を嵌めた手に叩かれた。
振り返ると、老紳士が立っていた。今日の朝出会った執事だ。
「ん? あなたは確かユウキお嬢様の……」
「ご無沙汰しております。わたくし、ラスベルシア家の執事をしております、ヴァルジアと申します。いやはや貴方様は目立つゆえ、探すのは簡単でしたな」
「なにか御用で?」
「はい。実はお嬢様のご命令であなたにこれを渡すようにと」
ヴァルジアさんは紙切れを渡してくる。
紙切れを受け取り、内容を見る。紙切れには住所が書いてあった。
「これは?」
「招待状です。ぜひ明日の午前10時、ここへ来てください。お嬢様よりお話があります」
「えっと、お話って?」
「それは明日、お嬢様の口からお教えします。申し訳ございません。これ以上の説明は禁じられております」
「すみませんが、こちらも野暮用を抱えておりまして、もしかしたら行けない可能性もありますがよろしいですか?」
「はい。ご都合が悪ければ無理にとは言いません。では、私はこれで失礼いたします」
ヴァルジアさんは大きく頭を下げ、店を出ていった。
「よくわからないな。無視でいいか」
「いえ! これはチャンスですよザクロさん!」
なぜかライラちゃんは机を叩き、身を乗り出してきた。
「な、なにが?」
「ラスベルシアと言えば北の中央地フォルカスを仕切る大貴族です! ギルド総会にも大変顔が利くはずです! もしラスベルシアの名を使ってギルド総会に告発状を送ることができれば――」
「ザイロスをリコールできる、ってコト!?」
「そうです! ぜひその招待状が記す場所へ行って、ラスベルシアに取り入ってください!」
思いがけない幸運、ってわけか。
しかし、一体なんの用で俺を呼んでいるのだろうか。盗賊から助けた礼はすでに馬車に乗せてもらうことで払ってもらったはずだ。
まぁいいか。罠ってこともないだろうし、行くだけ行ってみよう。
――――――――――
【あとがき】
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