第4話:まじで仙女?。

クーニャンさんが来てくれるようになって俺は毎日が楽しくてしょうがなかった。

台所でエプロンをしてるクーニャンさんを見てることが日課になった。


クーニャンさんの手料理は天才的・・・美味しい料理がなんでも出てくる。


その手早さも半端なく、見る間に料理が出来上がっていく。

気がつけばいつの間にかキッチンテーブルの上に料理がちゃんと並んでる。

早くて美味い・・・クーニャンさんはすごい。


でもって晩ご飯は、クーニャンさんも僕と一緒に食べてくれる。


最初は料理だけ作ったら、帰っちゃうのかと思ったらタイムリミットまでは

いてくれるんだって・・・。

だから俺のリクエストで一緒にご飯を食べることになったんだ。

まるで新婚さんみたい。


毎日クーニャンさんの笑顔を見てる僕、彼女を好きにならないはずないよね。


サークル活動が終わったら、僕は一目散にマンションに帰ってクーニャンさん

がドアホンを鳴らすのを、手ぐすね引いて待っている。

そんな幸せな日々が続いていった。


クーニャンさんを待ってるまで毎日落ち着かなくて部屋のあっちこっち掃除を

したり曲がったソファなんかを直したり・・・ね、もう気はそぞろ。


今日も今日とて、クーニャンさんは僕のマンションへやってくる。

キッチンに立って料理を作ってる彼女の姿を眺めてるだけで、幸せ。


あれ・・・僕、クーニャンさんに恋してる?

してるよね・・・だって彼女のことを考えると切なくて胸が苦しくなるんだ。


あ〜あ、でもな、また片想いなのかな・・・僕ってずっと片想いなんだよな。

中学も高校も・・・両想いになったことないし・・・。

そういうブルーなことが続くと、それが当たり前って思ってしまう。

まあ、それでもクーニャンさんといられたら・・・。


「あのさ・・・クーニャンさん・・・いろいろ聞いちゃうけど、また聞いていい?」


「どうぞ・・・」


「君はずっと日本で育ったの?」

「まだ若いのに、なんで家事代行なんかしてるの?」


「敬四郎のお家で働かせてもらうなら、本当のこと言っておいたほうが

いいだか?」


「ほんとのこと?」


「これから私が言うこと聞いて驚かないでね」


「え〜?・・・」


「私ね、ほんとは仙女なの・・・」


「は?・・・・せ、仙女?」


「私ね、赤ちゃんの時、大鷲にさらわれちゃったんだって・・・」

「でね瀕死の重傷を負ったのね」

「本当はそのまま大鷲の赤ちゃんのご飯にされちゃうところを、たまたま紅崙山こうろんさんって霊山から下界に降りてきてた 幽老参人ゆうろうさんじんって仙人ちゃんに助けられたの」


「で私は、傷の手当もかねて参人ちゃんと一緒に紅崙山に住んでそこで

育てられただわ」


「参人ちゃんのお弟子ちゃんになっちゃったことで仙術の修行なんかする

ようになっちゃって・・・」

「がんばって修行して仙術を身に付けただけどね・・・やっぱり下界が

恋しくて参人ちゃんに内緒で霊山を降りちゃっただわ」


「降りてきたのはいいけど、右も左も分からなくて、しばらく中華料理屋さん

に雇ってもらってで働いてたの」

「でも不景気でしょ・・・中華料理屋さんが潰れちゃって・・・」


「私は仙女だから、多少の間ご飯食べなくても大丈夫だからね」

「でもなにもしないでボーッと生きてたら堕落していちゃうでしょ?」


「でね、その中華料理屋の奥さんの紹介で家事代行で働くことにしたの」

「で、今、こうして敬四郎のマンションにいるだわよ」


「そうなんだ・・・仙女って・・・いるんだ・・・仙術が使えるんだ」


「だね・・・孫悟空きたいに普通に雲にも乗れるし・・・一瞬に移動だって

できるよ・・・でも一番得意なのは料理」

「私の頭の中には500万品のレシピが入ってるの」

「ね、家事代行向いてるでしょ?」


「500万品だって?・・・まじで?」


「だから私、将来は中華料理屋かレストランのお店が持ちたいだわ」


「そうか、夢があるんだ・・・いいね・・・でもな500万品ってすごくないか?」

「僕は毎晩、そのレシピの中の料理食べてるんだ」


「なんせ私、仙女だし・・・」

「でもさっきの私の話聞いて変な女だと思わないでね、お願いね」


「仙女ってのには、さすがに驚いたけど変な女だなんて思わないよ」

「それどころか僕さ、クーニャンさんにますます関心持ったかな?」


「だって君みたいな女の子、見たこともないし会ったこともないもん」

「もう興味津々」


「え?そうなのか?」

「じゃ〜私、まだまだここにいていいか?・・・敬四郎」


「もちろん・・・このさい家事代行なんかやめてずっといて欲しいくらいだよ」


つづく。


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