奇妙な住宅

聖羅 

奇妙な家

数年前…俺は田舎から東京に越してくるにあたって、住む場所を探していた。

その時にお世話になったのが、ここの不動産屋だ。そしてこっちで働くようになって恋人もできそろそろ結婚を考えていた時期だった。


不動産屋から数年ぶりにメールが届いたのだ。

いや、実際にはメールと言うよりかは提案に近いだろう。


メールに書かれていた内容としては、利用されたことある全ての人に対してこのメールを送っているということ。そして、もし住居に関して相談があればいつでも来てくださいというものだった。


住居に関する相談…これは魅力的だ。

俺はすぐにそのメールに返信をした。

そして今日は住居に関して相談をする日だ。これはメールのやり取りで数日前に決まったことだ。




不動産屋につくと、数年前と変わらない風貌をした男が現れた。


「いや〜お久しぶりですね。祈さんは最近どうです?」

「私は上手いことやってますよ。それで今回の話なのですが…」

「あぁその話ですね。こちらへどうぞ。中で話をしましょう。」


そう言って案内されたのは前回、住む場所を決めたあの部屋だった。


「懐かしいものですね。あのときは貴方様もお若かったのに、今ではいい男性になっているではありませんか。」

「あはは…ありがとうございます。あの時からは変わりましたよ。」


実際、あの時はまだ右も左もわからないような学生だったからな…今思えば、よく今の今までやってくることが出来たと思う。


「まぁ話もこれくらいにして…本題に入りましょう。今回ここに来たということは我々のメールを見て、住居の内覧へと行きたいということですね?」

「えぇそのとおりです。お願いしてもいいですか?」

「勿論です。それでは私についてきてください。さっそくご案内させていただきます。」


俺が着いていくと、そこにはいたって普通の住居があった。


「えっと…これがその家ですか?」

「えぇそうです。それでは中の準備を整えてきますので、いましばらくお待ち下さい。」


そういって彼は中に入っていった。数分後…彼は玄関のドアを開けて俺の事を出迎えてくれた。


「さぁ入ってください。中の準備も整っていますので。」

「失礼します。」


俺は中に入って彼から説明を受けた。


「この住居はいたってシンプルです。こちらの資料を見ればわかるのですが、一般的な内装をしています。広さも一般的です。」

「なるほど。ですがどうしてこちらをオススメしていたのですか?」

「そここそが、一番重要になってきます。まずこの住居…いったいおいくらすると思いますか?」

「そうですね…一般的な住居と考えれば、数千万は行くんじゃないでしょうか?」

「いえ。この家は五百万円です。」


俺はその金額に驚愕した。

普通に考えて、そんな金額で売りに出せば損にしかならないからだ。


「どっどうしてそんな金額で売っているのですか?なにか特別な理由でも有るのですか?」

「そうですね。特別な理由があるかないのかと言われれば、ないとはいえません。ですが有るとも言えませんね。」


…つまり詳しく話たくない理由でも有るのだろう。

俺はもしかして事故物件だったりするのかも…と思ったが、それでも値段は魅力的だった。


「値段は魅力的ですが、値段の決め手と言いますか…理由がわからないとやっぱり購入することは難しいです。」

「わかりました。直接伝えることは出来ませんが、幾つかのヒントは差し上げます。」


そう言って彼は次のように告げた。


「この住居があるこの地の昔の地名…『蛇門』というのが原因です。是非この値段になった原因を探ってください。探った上で購入の是非を決めていただきたい。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

奇妙な住宅 聖羅  @kce65895

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ