第3話 ルーミリア寮へ
「カイル君、バッケスについたよ」
ゼノンはそう言うと座席でうなだれるカイルの背中を優しく叩いた。
「ああ……そうか。ようやくだな……あ、駅弁食い忘れた」
馬車と違ってすぐに酔わなかったため、大丈夫だとたかを括っていたが、ゼノンとの話で盛り上がりすぎたのか、10時間の乗車時間は長すぎたのか、カイルは列車酔いをして体調を崩し、駅弁も食べるのを忘れてしまっていた。
偶然にも向かいに座っていた母親と少女もバッケスで降りた。少女は降りる時、カイルの体調を気にしている素振りを一瞬見せた。
「大丈夫?カイル君?」
「ああ、だいぶ体調は良くなってきた」
古都バッケスは別名「石の街」と呼ばれる街で昔ながらの石造りの建物が並んでいる。また、バッケスは海に面していることもあって、貿易が盛んに行われている。
二人はそんな街を歩いて、これからの学生生活の拠点となる「ルーミニア寮」を目指していた。
「わぁ…凄い。活気があるねぇ」
「ああ、八百年前に魔物に襲われて一度滅んだ街だとは思えないな」
「そうだねぇ」
カイルは事前に調べたバッケスの歴史からもっと落ち着いた雰囲気の街であると想像していた。
とりとめのない話をしながら長らく歩き、辺りから太陽の明るさが消えた頃、二人は寮と思しき建物に着いた。
寮は街のはずれにあり、石の街のバッケスには珍しく緑に囲まれた中にポツンとある木造建築だった。
「……あ、わぁ……風情があるねぇ」
「……ああ、そうだな。ものは……いいようだな」
ルーミニア寮はカイルが思っていたより、こじんまりとしていて、オンボロでツギハギだった。屋根は雨漏りを防ぐように板が打ち付けられ、何かが爆発した後のような壁も色の違う木材によって無理やり修繕されていた。
カイルが寮の地図が間違っていてくれないかと思っていると、寮であろう建物のドアが開いた。
「そこの二人、新入生だろ?」
玄関には高身長の小麦色に焼けた体格のいい男がいた。
カイルはその先輩であろう人に覚悟を決めて元気よく挨拶した。
「はい!今年からルクヴァール魔術学園に入学するカイル・アンクロットと申します!!」
「同じく、今年からルクヴァール魔術学園に入学するゼノン・ハイビスです!」
ゼノンも続いて自己紹介をした。
「ルーミリア寮はこちらの建物でよろしいでしょうか!」
褐色の男は元気の良い挨拶を聞いて笑みを浮かべた。
「もちろんここがルーミリア寮だ!俺は今年ルクヴァールの三年生のバサラ・ゴズパス。このルーミリア寮の寮長の役割も担ってる。」
カイルはどうやらこの建物で合っているらしい事を知ってショックを受けたが表には出さなかった。
「バサラ先輩!これからよろしくお願いします!」
「お願いします!」
二人は頭を下げた。
「ははは!まぁ立ち話もなんだからな。中に入って話そうじゃないか」
二人はルーミリア寮に招き入れられた。
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