なんじゃら保育園通り商店街。

猫野 尻尾

第1話:商店街のピンチ。

第1話完結です。


ここは南堕楼町なんだろうまち・なんじゃら保育園通り商店街。

なんでも遠い昔、このあたりに遊郭があったらしい。


俺の家はその商店街の中でお好み焼き屋を営んでる。


あ、俺の名前は「「長月 出雲ながつき いずも」現役高校生の17歳。


商店街にはいろんな人たちがいる。


大事なダチもいる。

まず俺の幼馴染。


水無月 弥生みなづき やよい」同じく現役女子高生の17歳。

イコール俺の彼女。

弥生の家は理髪店を営んでる。

理髪店はご多聞の漏れず商店街の連中のたまり場になってる。

現役を引退したじじいどもは暇だから将棋や囲碁さしにやってくる。


弥生は近所の空手道場に通ってる。

子供の頃、病弱でイジメに合ったことから、空手を始めた。

そのおかげで体も丈夫になってイジメにも会わなくなった。

だから今じゃケンかは誰よりも強い、半端なく強い。


そしてプリキュアを見て育ったためコスプレに目覚めて日頃から自分は

正義のヒロインだと思い込んでいる。

学校の制服を脱ぎ捨てて自作のコスチュームを着てるコスプレーヤー。


「愛と正義のヒロイン・プリティー・ラブ」と名乗って、普段から、いろんな

コスチュームを着て行動し、バスや電車もその格好で乗るし学校へもその格好で

通ってる。

先生から「制服はどうした?」って指摘を受けたが「制服は捨てました」って

言って結局コスプレのままその場を乗り切った。


最初はめちゃ違和感があって、みんなから「おまえおかしいだろ?」って

言われたが、今ではなまじ制服なんか着てるほうが、何かあったんじゃないか

って思われる・・・そんな女、それが俺の彼女。


ちあみにプリティーラヴって・・・大人のおもちゃの名称だけどな・・・。


あともうひとり俺の同級生。

まあ俺と馬があって、男で一番、仲がいいのがこいつ。


五味 集吉ごみ しゅうきち」現役高校生の17歳。


こいつの家は金物屋を営んでる。

趣味はアニメ全般・・・アニメにフィギュアにモデルガン、プラモにカードに

美少女育成ゲームに夢中。

マニアックオタクまっしぐら。


で、こいつを忘れたら怒られる。


選取 みどりよりどり みどり」現役女子高生だった。


だったってのは、こいつは、今はこの世にいないからだ。

つまり幽霊。

交通事故で亡くなった。

みどりは弥生の唯一の親友だった。


彼女は、幽霊だから当然、人からは見えない。

心を通わせた俺たちだけに彼女が見えて、しゃべることもできる。

便利なのは、みどりはどこにでも現れることができる。

だからスマホなんていらない。

触ることも触れることもできないのが問題だけどな。


でもってもう一人。

こいつは現在、お相撲さん、力士をやってる。


しこ名は「満腹山」


もともと図体がデカくて何台も原チャをダメにしてるやつ。

なもんで「閑古鳥部屋」の親方から、うちへ来んか〜ってスカウトされて

中学をやめて相撲取りになった。

正月になると実家の中華料理屋へ帰って来てることがあって、よく商店街を

自転車で走ってる姿を見かける。


他にも友達や知り合いはいるけど、深い付き合いはそんなもん。

みんなそれぞれクセのある個性の持ち主・・・まあまともなのは俺くらいか?


俺は毎朝、コスプレーヤーと一緒に学校へ通ってる。

最初はコスプレーヤーになった弥生を連れてバスに乗るのは恥ずかしくて

抵抗があったけど、今はもうなんとも思わなくなった。

こいつはこう言う女だから言ってもしょうがないって割り切ってしまえば

気にはならないもんだ。


むしろ弥生のせいで俺もコスプレ好きになったくらいだ。

ああ、仮装するほうじゃなくて、見る方のね。

って言ってもイベントに参加するほどじゃないけどな・・・。


そんな平和な中、商店街にひとつの難題が持ち上がった。

なんじゃら保育園通り商店街は、もともと市の土地の上に店が建ってるんだ。

つまり、上地と底地が違うってわけ。

土地は市のもの、建物は商店街の連中のもの。


噂ではアミューズメントパーク級ショッピングモールが進出して来るって

話が持ち上がってるらしい。

で、その白羽の矢が立ったのが、このなんじゃら保育園通り商店街。


商店街をぶっつぶしてショッピングモールを、おおっぴらに建てようってことだな。

おまえら出て行けってことらしい。


商店街の人たちからしてみたら寝耳に水な話。

そんなバカな話、受け入れられるわけないだろうって話になるよね。

当然、商店街あげてショッピングモール進出に全面反対することになるわけで。


もちろんこの俺も・・・愛と正義のヒロインも・・・アニメオタクも

相撲取りも・・・幽霊も・・・。


商店街あげてアミューズメントパーク級ショッピングモール進出反対。

みんなで徒党を組んで「打倒!!」って書いたプラカードなんか持って大反対。


まあ、そんなことをやってたら、当然怖い連中が出てくる訳で、お役所や公の

企業が・・・手に負え得なくなったら、そう言うやつらが絶対と言っていい

くらい現れる・・・定番みたいに。


でもこっちには空手の達人コスプレーヤーと現役の相撲取りがいるんだ。

幽霊だっているし。

そんなやつらの脅しなんか通用しねんんだよ。


うん、俺は全面には出ないで後ろに引いて監督してるけどな。

案の定、怖いやつらは 弥生と満腹山の二人にボコボコにされて、捨て台詞を

残して退散していった。


で、結局、最終的な話し合いの末、金で解決・・・示談ってことになった。

まじでか?・・・俺たちの頑張りはなんだったんだよ・・・大人って、なんで

金に弱いんだ。

政治家も一般市民も関係なく金で心を簡単に売ってしまう。

道徳やモラル、正義なんてどこにある。


世の中、どいつもこいつも金の亡者だよ。

あ〜あ、汚れた大人にはなりたくない。


この先、俺たちの商店街はどうなちゃうんだろう。

まあどうせ俺は高校卒業したら、弥生を連れてここを出て行くけどな。

あとのことなんか知ったことか。


それから何年かして地元に帰ってきたら、そりゃ立派なアミューズメントパーク

級ショッピングモールが商店街があったあとに建っていた。


俺は、客として弥生を連れて買い物にでかけたけどな・・・。

時代の流れには逆らえないのさ。


おしまい。




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なんじゃら保育園通り商店街。 猫野 尻尾 @amanotenshi

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