【短編/1話完結】幸せを探して
茉莉多 真遊人
本編
私は幸せを探していた。
周りからは夢を持ち過ぎだとか騙されやすそうだとかと散々バカにされているのだけれども、全然気にしていない。
そして、私は幸せを探して家をよく見るようになった。今日も今日とて、部屋を見に行く。私くらい部屋を見ていると、部屋だけでも雰囲気が分かる。
ここがリビングかな、その隣はダイニングで、キッチンは対面式で楽しそう。ここを見るだけで今まで見たどの家よりも、新しくて、明るくて、楽しそうで、何より幸せにあふれていそうだ。
ここに決めた。
「にゃー」
私は家の人に声を掛ける。
「あ、お母さん! 猫だ! 近付いても逃げないし、こっちを見てるよ?」
「あら、本当。野良なのに愛想がいいのね」
小さい人と大きな人が話し込んでいるようだ。私には言葉が分からないけれど、表情を見る限り、悪い感じじゃない。
「この猫、飼おうよ!」
「うーん、じゃあ、今度ペットショップ見てみる?」
小さい人が大きい人にくっつき始めて、大きい人はこちらと小さい人を交互に見ている。どうなんだろう。ドキドキする。
私の方を見て何か話している。何かを見つけて嬉しそうな感じだけど、何を見つけたのだろう。
「にゃー」
どうでしょう。私、どうでしょう。ほら、撫でてもいいんですよ。
「ね? 飼おう?」
「そうねえ……たしかにこの子も逃げないし……まあ、ご飯が欲しいだけなのかもだけど」
大きい人が何か考えているようだ。撫でても大丈夫ですよ。毛づくろいはこまめにしていますから綺麗です。
「飼おうよー」
「はいはい、でも、パパとも相談しましょうね」
「やった! 逃げちゃうかもしれないから、お家に入れていい?」
「もー、しょうがないわね」
「にゃー」
私は小さい人に抱きしめられて家の中に入っていった。
こうして、私は探し求めていた幸せを手に入れた。たまに痛いことや普段の食べものじゃないものを食べなきゃいけないこともあるけれど、温かいお家の中で優しい人に囲まれて暮らしている。
【短編/1話完結】幸せを探して 茉莉多 真遊人 @Mayuto_Matsurita
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