同じ部屋

ケロ王

KAC20242 同じ部屋

西野祐樹は引っ越しのために不動産屋を訪ねていた。

彼が引っ越しのための物件を探していると告げると、不動産屋のチャラそうな男が具体的な条件を聞いてきた。


「えーと、ワンルームで、広さは8畳くらい欲しいかな。それとユニットバスで、キッチン付き、あとは駅から10分以内、家賃はだいたい月に8万くらいで、敷金礼金は少ない方が良いですが、特に決めてはいません」

「そうですか、少々お待ちください」


彼の条件を聞いた男は、奥に行くとパソコンに条件を打ち込み、検索結果をプリントして戻ってきた。


「えーと、西野さんの希望条件に該当するもので、良さそうなものはこちらですね」


そう言って、男は10枚ほど物件の詳細の書かれた用紙をテーブルの上に置いた。

いずれも、ワンルームであるため、基本的な間取りにほとんど同じ、収納の大きさやキッチンの広さ、築年数、駅からの距離が異なり、それに応じて家賃が上下するような感じであった。


「こちらの物件は、どの部屋も空いておりますので内見されますか?」


迷っていた彼の様子を察したのか、男は中を見て決めないかと提案してきた。

彼も男の提案を渡りに船と思い、是非にとお願いしてきた。


こうして、二人は条件の良さそうなものから順番に部屋を見ていく。


最初の部屋に訪れた西野は、中を見て呆然としていた。


「どうかなさいましたか?」

「いえ、お構いなく」


西野ははたから見ても明らかに動揺していたが、本人が気にしなくても良いというので、男は中を順番に説明することにした。


「えーと、キッチンはこんな感じで、上に収納がついています。中の大きさはこんな感じですね。ユニットバスはこんな感じです。今はカーテンがかかっていませんが、入居日までにはつけておきます。そしてお部屋の方がこんな感じになっていて、クローゼットはこちらになります。中は――」

「待ってください! もう説明は良いです。あとは私の方で色々とみてもよろしいですか?」


男がクローゼットの中身を説明しようとすると、突然西野が大声で制止した。


「はい、わかりました。ごゆっくり見てください」


西野はテキパキと部屋の中を見て回っていた。

当然クローゼットの中も開けて中を見ていた。


「ありがとうございます……。他の部屋も見たいのですが、よろしいでしょうか?」


こうして、西野と男は、次々と部屋を見て回っていったが、気に入った部屋が見つからないのか、次第に憔悴し始めた。


そして、10件目を回った頃には、カッと目を見開いて、冷や汗をダラダラと流していた。


「西野さん、大丈夫ですか?」

「はい、つかぬことを伺いますが、なぜ、どの部屋もなのでしょうか?」


男は彼の言っていることの意味がわからなかった。

確かに、ワンルームである以上、似通った部屋になるのは仕方ない部分もある。

しかし、内装や収納の大きさや部屋の形、キッチンの配置などは微妙に異なり、決して同じものに見えないはずであった。


「確かに、間取りは似通ったものになりますけれども、どの部屋も内装は違ってましたよね?」

「え?! いえ、全部寸分たがわず同じだったじゃないですか!」


男の言葉に、彼は憔悴しながらも憤っていた。

しかし、男も適当に選んだわけではない、仮にもプロとして顧客に満足してもらえるように選んだのである。


「お言葉ですが、私もプロとして、お客様に部屋をご案内しているのです。自信をもって、お客様の好みに合った部屋を選んでいただけるように厳選しているのです。そもそも、同じ部屋だっていうのはお客様の気のせいなんじゃないでしょうか?」


男は少し苛立ちながら西野に言うと、彼は青ざめ憔悴しきった表情を男に向ける。


「だって、どの部屋にもクローゼットの中にアイツの死体が入っていたじゃないですか」

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同じ部屋 ケロ王 @naonaox1126

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