ラブコメと少女漫画は共存可能なんですか⁈

成瀬

1章 幼少期編

プロローグ

 突然だが、俺には前世の記憶がある。


 え?そんな設定ありふれてるし、まずお前誰だよ!ってか?


 まあまあ、自己紹介は後でするとして、もうちょっとだけ、聞いていってくれよ。


 前世の俺は、どこにでもいる様なごく普通の高校生で、何かに熱中することはなかったけど、友達と馬鹿やって、それなりに楽しく過ごしてた。


 さっきから前世、前世って言ってるけど、ぶっちゃけ死因とか全然覚えてないけし、真っ白な世界で神様と話すなんてことも無かったんだよね。


 それでも、今の状況から察するにそういうことなんだと思う。


 だって、気がついたら、頭は割れる様に痛いわ、額を抑える手は妙に短いわ、周りの人達は見覚えがない上にやたらデカいときた。


 これはもう、一度死んで生まれ変わったとしか考えられない。


 ていうか、冷静にモノローグ語ってるの、そろそろしんどくなってなってきた…


「いっだぁ〜〜い!」







「ごめんなぁ、テル。兄ちゃんが、お前とサッカーしたいなんて、言い出したばっかりに」


 そう言って謝る、目の前の少年は「天内海斗」、今世の俺の兄である。


 齢10歳ながらも、目鼻立ちが整っており、優しそうな目の下にある泣きぼくろが特徴的な美少年だ。

 

 小学生にして、ファンクラブがあるとか無いとか、きっと将来は多くの女性を泣かせるに違いない。


 おっと、実の兄に対して、つい本音が漏れてしまった。俺の方が精神年齢は上なのに、いけない、いけない。


「にーちゃんの、せーじゃないから」


 かく言う俺の名前は、「天内照人」、5歳。あの兄の弟にして、なかなか将来有望そうな顔立ちをしている。


 兄ちゃんが、全体的に優しそうな雰囲気を醸し出しているのに対し、俺は勝ち気というか生意気そうな出立ちだ。


 だけど、何だろうこの妙な既視感。自分の顔に対して、見覚えがあるというのも変な話だが、何か引っ掛かる。


 前世の記憶も引っくるめて、思い出そうとするが、さっぱり分からん。考えても出るようなものじゃないし、忘れよう。


「そーそー、ほとんどこの子の自滅だし。海斗が気に病む必要ないのよ。それにしても、照人は注意力散漫ね」


 ちょっと俺に辛辣なことを言う、吊り目の美人さんは今世の母、「天内美代子」である。


 いや、自滅といえば自滅なんだけどさ、もうちょいオブラートに包んで欲しいよね。


 家の庭で、サッカーボールを使ってパス交換をしていた俺たち兄弟だったが、ボールを止めて蹴るの繰り返しに俺は少し飽きてきていた。


 そうして、玄関のチャイムの音が響き、気になって、ボールの上に足を乗せたまま駆け出そうとして、正面から転んだというわけである。


 というのも、今日は仕事で家を空けがちな、父が久々に帰ってくる日だったのだ。駆け出しても仕方がないと、大目に見て欲しいものだ。


「まあまあ、美代子もその辺で。照人も、父さんに会いたいって気持ちは嬉しいけど、今度から気をつけような」


 そう言って、頭を撫でてくれるているのが父「天内宣之」。目は兄とよく似ていて、一見ただの優男にしか見えないが、海上保安庁に勤めているだけあって、筋肉がしっかり付いている。


 前世の記憶を取り戻した直後は、頭の中が交錯していたが、時間が経つにつれて、前世と今世の記憶が整理されていき、今の人間関係をはっきり認識できるようになった。


 どうせ転生するなら、剣と魔法のファンタジー世界が良かったと思わなくもなかったけど、サッカーは割と好きな部類だった。


 今世はプロ、ゆくゆくは代表選手目指して頑張るのも、悪くないな。




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