理想の家

空山羊

理想の家

俺の名前はビルド=リーソウ。

俺は冒険者だ。冒険で生計を立てているが、冒険で財を成した暁には俺が理想とする家を建てたいと思っている。

そして、そんな俺の趣味は『魔物たちの住宅の内見』だ!!


冒険者やってると色々な奴がいる。

ある意味、俺もそんな特殊な連中の一人なのかもしれない。


俺が魔物たちの住宅の内見を趣味にしたキッカケはゴブリンだ。


ギルドからの依頼で大量発生したゴブリンの討伐の際に、討ち漏らしのゴブリンが一匹逃げた。


追いかけていき討伐したのだが、討伐した先がゴブリンの集落だった。


ゴブリンの集落は枯れ木などで造られていた。


一見するとどれも同じに見えたが、よくよく見ると一軒一軒個性があった。


俺はここに魅かれてしまった。


最初に見たゴブリンの家は単身者なのか、凄く小さく汚い小屋とも言えぬような家だった。

次に見た家はゴブリンメイジの家なのか魔術に必要な道具などが、壷に入っている家であった。

ゴブリンジェネラルの家には剣が飾ってあり、奥の個室には人間の生首が、まるで勲章やトロフィーのように飾られていた。


極めつけはゴブリンキングの家であった。

広いリビングがあり、子ゴブリンも多くいた。

そして、部屋が複数あり、人間の街から奪ったのかベッドが各部屋に置いてあった。

最初はなんのことかわからなかったが、住宅の裏手に行って全ての謎が解けた。

住宅の裏には牛舎のような施設があり、そこには捕らえられた人間の女性たちが全裸でいれられていた。


ゴブリンはオークなんかと一緒で誰彼構わず交わり、その種を増やしていくと聞いたことがある。

つまり、あの部屋はそういうことの様だ。


その事実を知った時に俺は吐き気よりも憎しみよりも何よりも魔物たちの住宅が秘めている事実に打ち震え感動した。


そこから俺は変わった。

俺の理想の住宅を思い描いては魔物たちの住宅に何度も何度も内見をした。


時にはスライムの家にも内見した。

スライムは面白いもんで、岩肌や土などに自身の酸などをぶちまけて穴を掘って洞穴スタイルの家を建てる。

その中で寝たり狩った動物などの死骸を保存する部屋などを造ったりする。

ただし、スライムも属性によって様々だった。

一般的なスライムは先に述べた通りだが、水属性のスライムは海や川の中に住居を造ったり、メタル系のスライムは鉱山だったり、冒険者の装備を溶かして洞穴に吹き付け強度抜群の住宅を造ったりしていた。


オークはゴブリンより良い家が多く太い木を使ってログハウスっぽい家を造っていたが、その大部分がヤリ部屋であとの部屋は子供部屋であった。


そうやって俺はこの10年、魔物たちの住宅の内見を続けてきた。

内見を続けていくうちに銅級からミスリル級にまで冒険者ランクがあがり、俺にも二つ名がついた。

狂喜建築クレイジービルダー

俺にはどういう意味か分からないが、周りからはそう見えているようだ。

だから、俺の周りには人が寄ってこない。

ミスリル級っていったら誰からも尊敬されるはずなのに。。。

まぁ俺は尊敬なんかよりも自分の理想を突き詰める方がいいからいいのだが、、、


そう思って理想の家を建てるべく内見を進めていくうちに、今から2年ほど前に高位ゴーストのリッチとネクロマンサーを捕獲し、その技術と魔術の神髄を総て手に入れた。


結果として俺は朽ちることのない生きている家を建築することが出来た!




そんな俺の理想の家が出来たので、今日は皆さまに内見していただこう。


これが、ビルド=リーソウ様の理想の家だ!!


まずは家の基礎はストーンゴーレムの頭だ。

胴体とかはいらない。頭だけだ。この家の基礎ではストーンゴーレムの頭を1,000個使っている。


次に家の骨組みだが、骨組みと言ったら骨なので、多くはスケルトンを使用している。

もちろん大黒柱や大きな梁はジャイアントスケルトンを使用しているので耐震性も抜群だ。


骨組みときたら床板だが、床板にはトゥレントの顔を使っている。

生きたまま剝いでいるのでトゥレントの絶望が滲み出ていて最高の風合いだ。


壁の断熱材にはリビングデッドの肉をこれでもかと詰めてある。


壁にはポイズンパイソンの鱗を使っている。

この蛇は猛毒を有していて生きたまま剥ぐと毒が残る。

そうすると虫も寄ってこない。


蛇口を捻るとスライムが出てくる。

スライムは飲んでも風呂にしても体にいい。


ちなみに照明は火の玉エレメントだし、冷蔵庫はフロスト魔人だ。


寝室はいつも私のことを見守っていて欲しいから、壁も床も天井も全て、に、、、の顔のオブジェで埋め尽くしている。


これは、ゴブリンジェネラルの隠し部屋に飾ってあった生首から着想を得た自信作だ!


常に見られていることが、今の私の快感だし、素敵な女性といたす時も見られて叫ばれて最高に燃えるんだ。


これが私の理想の家。

あなたも私の住宅に内見しにきませんか?


私はいつでも皆さんの内見をお待ちしております。





おや、今日も私の住宅の内見に大勢の人間たちが来たようだが、また、内見で禁止している火器や武器を持ち込もうとしている。

私の理想の家が傷つく前に、あの人たちにもになってもらって、この家の素晴らしさを理解してもらわないと、、、

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