ネジの外れた天才小学生たちが、秘密基地を守るために立ち上がる!

薄味メロン@実力主義に~3巻発売中

みんなで がんばろう

 夏休みの宿題をしていた、その日。


「やばいよ! 3日後に内見が来るみたい!!」


 秘密基地に駆け込んできたアズマが、息を切らしながら そう叫んでいた。


「ないけん? 誰、それ」


「金の力で秘密基地を奪う、悪の組織みたい!」


 秘密基地を奪う?


「父さんが言ってたんだ! 内見が来るから、もう秘密基地で遊んだらダメだって!!」


「……えーと??」


 意味がわからなくて、頭がいいハルマを見る。


 ハルマは眼鏡をくいっとあげて、話してくれた。


「ボクたちが秘密基地にしている家を買いたい人が現れた。そのような話ですね」


「んー、そう言えば。秘密基地の門の前に『売り家』って看板があったかも」


 アズマのお父さんは、家を売ったり買ったりする人だ。


 だから、不思議な話じゃないんだけど、


「悪の組織って言うのは??」


「だって あの秘密基地だよ!? 普通の人が買うわけないよ!!」


「……そうかも」


 丘の上にある、吸血鬼が住みそうな建物。


 地下には、秘密の実験が出来そうな部屋もある。


 僕たちが掃除する前は、すべてがお化け屋敷だった。


「あんな場所を欲しがるのは、悪い人かも」


「だよね! 絶対に、人類の平和を壊す悪の集団だよ!!」


「ありえますね」


 みんなの意見が一致した。


 地球の危機だ!


 みんなで、秘密基地と地球の平和を護らないと!!


「そう思いますが、ボクたちに出来ることは限られています」


「お父さんには、なにもするなって言われた……」


 子供だから、出来ることは少ない。


 お父さんやお母さんを頼っても、たぶん、危ないからって反対される。


 絶対に助けてくれない。


「でも、大人に助けてもらった方がいいよね……」


 親はダメ。


 自分達だけだと、不安がいっぱい。


 あと、頼れそうなのは……



「とりあえず、先生に相談に行こうか」



 そう言うことになった。



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 職員室でお菓子を食べていた先生に、防衛作戦の相談をする。


「いいですよ~。先生が相談にのってあげますね~」


 ちょっと頼りないけど、やっぱりいい先生だ。


 教壇に立った先生が、黒板に向かう。


『秘密基地の守り方』


 そう書いて、僕を手招きした。


「進行役は、ケンジくんにお願いしますね~」


「わかりました」


 素直に前に出て、クルリと振り返る。


 教壇に立ちながら、席に座る友達に目を向けた。


「目標は、悪の組織に秘密基地を買われないようにする。これはいいよね?」


 みんなが頷いてくれる。


 カツカツカツと、黒板に目標を書いていた。


「その方法として考えられるのは、大きく分けて2つ」


 1 敵を追い返す

 2 買いたくないと思わせる


 振り向いて様子を見たけど、これも大丈夫みたい。


「それじゃあ、良さそうな案があるひとー」


「「はーい!」」


 2人の手が大きくあがった。


 先に頭のいいハルマを指さして、場所を交代する。


 ハルマはランドセルを持って、教壇に立ってくれた。


「ここにダイナマイトがあります」


 ハルマはそう言って、ランドセルの中から筒状の物を取り出した。


 テレビで見たことある。


 なんかこう、すごい爆発物だ。


「自分で作ったの?」


「はい。本当はニトログリセリンを作りたかったのですが、まだ小学生なので自重しました。中身は普通にトリニトロトルエンを使っています」


 なにを言ってるのかわからないけど、ハルマはこういう奴だ。


「ハルマお得意の、ネット通販?」


「その通りです。自由工作は楽しいですね」


 手が届く範囲の物を色々買って、爆弾を自作したみたい。


 たぶん怒られると思う。


 でも、まだ小学生だから、詳しいことはわからない。


「この爆弾で、敵を攻撃します」


「んー、いいかも。さすがはハルマ」


 爆弾は、大ダメージだ。


 これでどうにかなるかな?


 そう思っていると、先生が手を挙げた。


「うんうん。楽しそうでいいですね~。でも、誰かを傷つけるのはダメですよ~?」


「……ダメですか?」


「はい。ダメですね~」


 だめかぁ……。


 内見さんをダイナマイトで吹き飛ばすのは、ダメなんだね。


 勉強になったかな。


 そう思いながら、ダイナマイトを1本借りる。


「アズマは? なにかいいアイディアはーー」


 ない?


 そう続けようとして、ピンと来た。


「先生! 人を傷つけなければいいんですよね?」


「はい~。先生は、みんなの自主性を大切にしますから~」


 それなら大丈夫!


 頑張れば、誰も傷つかない。


「アズマ。秘密基地の設計図は、頭の中にある?」


「うん! みんなでいろいろ改造したからね!」


「秘密基地の弱い部分もわかるよね? 主に、土台を支える地盤に関してなんだけど」


「もちろん!」


 ハルマが作ってくれた爆弾。


 アズマが知ってる、建物の知識。


 この二つを組み合わせる。


「いい感じの場所で爆発させて、秘密基地を揺らそう。何回も連続で」


 そうすれば、敵はびっくりするはず!


 すっごく驚いて、帰ってくれると思う。


「揺れは、秘密基地が壊れないギリギリ。全体を大きく揺らす感じにしたい」


「うん! いいと思う!!」


 頭のいいハルマも、大きく頷いている。


 決まりだな。


 そう思っていると、先生が小さく手をあげた。


「揺れのシュミレーションは、きっちり分析してくださいね~? 出来るひと~?」


「「「はーい!」」」


 みんなで元気に手をあげる。


「先生! 学校のパソコンを借りてもいいですか!?」


「いいですよ~。先生が鍵を借りてあげますね~」


 これでやることは決まった。


 図面を書き起こして、3Dモデルを作る。


 爆発の威力や指向性などを測定して、能力を揃える。


「もしもし、ミサトちゃん? 建築物の経年劣化による品質の低下の測定に興味があるって言ってたよね? ちょっと測定してほしくて電話したんだけど……」


 作戦の決行まで3日。


 僕たちは、クラスのみんなに手伝ってもらって、頑張った。


「マエバラくん。はりの共鳴現象に関して、ちょっと相談したくて。必要なデータは入れたんだけど、再現性が乏しくて……」


 時間がないけど、出来ることを全力でする。


 それが正しいと思うから。


「先生が指摘した部分を修正して、逮捕されないように頑張りましょうね~」


「「「はーい!」」」


 そうして迎えた、内見の日。


 夏休み中なのに、クラスメイトのみんなが集まってくれた。


「2年2組、がんばるぞー!」


「「「おー!!!」」」


 気分は、運動会。


 失敗してもいいから、みんなで力を合わせて頑張ろう。


「司令本部から各位へ。準備はいいか?」


『点火班、異常なし』


『計測班、異常なし』


「よし。ターゲットが予定範囲に入った。カウントダウンを始める」


 練習もいっぱいした。


 楽しい思い出にしよう。



「発破!!」



 ☆ ★ ☆ ★ 


 

 丘の上にある、古びた洋館。


 そこには、子供の幽霊が住み着いると言う噂がある。


 内見の予約をして足を踏み入れると、たちまち館が揺れるらしい。


 何度も、何度も、不自然に……



 あまりにも怖くて逃げ出すと、背後から声が聞こえるそうだ。



「よくできました~。みなさんに花丸をあげますね~」



「「「わーい!!」」」



 そんな、子供の声が……

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