第18話 魔術師
……………
三本は先ず敵のステータスを参照し、魔術の用意を始める。
ジャージーデビル HP300/300
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『呪詛』を使用する。
三本が魔術の準備を進める中、靖穂もまた魔術の準備をする。それをみて、國山先生が彼女に訊く。
「靖穂さん、あなた、回復魔術しか使えない筈じゃ……」
「ちょっと試したい事があるんです……」
そう言いつつ靖穂は回復魔術の呪文を口ずさみ、魔術の紐を紡ぎ出し、それを三本の電撃と共に前方の敵に放った。
「!?」
その靖穂の魔術に触れたジャージーデビルに直ちにはあまり変化は見られなかったが、それが三本の電撃に打たれたとき、他のものとは違い、ダメージを受けた後も暫らく、のたうち回り、呻き、そのまま倒れて消え去った。
國山先生は驚く。
「これは一体……」
「『モラクス』の魔術や他の悪霊の魔術、三本先輩や先生の魔術を見ていて、それらの中身を覚えたんですが……自分の持っている魔術と参照したりしている内に気づいたんです。魔術の法則性に」
「法則性?」
「はい、私たちがレベルアップでいつの間にか覚える魔術の知識はどういうわけか頭に直接入れられるようなもので、使う際には様々な知識を脳裏に思いながら、呪文を口ずさみ、紐を紡ぐのですが……この紐の文字は頭に浮かべる中でも何度も出てくる言葉……。私の場合はラテン語、内容は何故かよくわかっていますが……そこに私なりに調べたラテン語の単語、『
「反転……その結果がこれという事……」
「ええ、これで魔術を理解することで応用が可能という事が分かりました……ゲームにしてはあまりにも不思議なことですがね……」
――これはやはり単なるゲームの世界というわけではない……なにか……何か裏がある筈。
靖穂はそう疑う。
國山先生は、三本の電撃によって様子をうかがっていたジャージーデビルたちが動き出すことを察知する。
「前衛、相手動くよ!」
突進の用意をする七体のジャージーデビルはその言葉の暫らく後に突進を開始する。
――ステータスに関しては中々強力だが……何故だ? あのモラクスの時ほど威圧感もなければ脅威も感じない……。
重吾はそう思いながら突進するジャージーデビルたちを稲葉さんと共に飛び越え、攻撃を避ける。金田は一匹の突進を角を掴んで受け止め、停止させる。10のダメージを受けた。
「ぬううん!」
が、そのままジャージーデビルを持ち上げ床にたたきつけた!
『ドガァアアアン!』
231のダメージによりジャージーデビルは瀕死となる。そのまま金田の正拳により89のダメージを与えられ消え去った。
重吾も飛び退いた後すぐにジャージーデビルの関節を的確に見極め、それぞれ的確に破壊し歩く能力を喪失させた。合計201のダメージを与えている。そのまま稲葉さんがその頭に踵落としを入れる。121のダメージを与えジャージーデビルを消し去る。
五匹のジャージーデビルは次なる魔術をを用意する三本や靖穂、國山先生の方へと突進を続ける。
だが、落ち着き払った靖穂は『モラクス』が行ったように魔術の紐を周囲に広げる。
――やはり、消費が多い! 先程の『応用』でも消費が大きかった……通常時の魔術は消費してもMP10ほど……20や25、振れ幅が大きく安定しない。今回も……30……。
紐に触れたジャージーデビルは電撃に打たれたものは朽ち果て、あるものは國山先生や靖穂に突進を避けられ、壁に激突し傷を受け、そのまま消え去った。
それを見た重吾がいう。
「流石は学校きっての天才だな。何でもそつなくこなすぜ……。まあ、どうやらおれらもまた今回のでレベルアップ。さらにこの二層でも力は通用するってわかったぜ」
金田が笑う。
「フッ……このままいけば一気にボスもぶっ飛ばせそうだな」
その時、三本が叫ぶ。
「まだ来るぞ、次は強い!」
全員が振り向くと迷宮の奥から三匹の大蛇と四人の子供のような背の中東系のゆったりとした衣装を来た男が現れる。重吾はすぐにそれらのステータスを参照する。
オロチ HP600/600
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『呪い』『蛇招来』『地震』を使用する。
ジャーン HP300/300
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『火球』『呪い』『地震』『疾風』『植物操作』を使用する。
「おいおい……コイツは中々……骨が折れそうだな」
重吾のその呟きの後、オロチの一匹は口を開き、叫び出す。
「ギシャァアアアアッ!」
その叫びに呼応し、魔術の紐がその口から地面へ飛び、大地の波打つ『地震』が発生。床が揺れ動き、ひび割れ、隆起し、壁が出来上がった!
落石や隆起から各々が分散し身を守る。
金田が一人、地盤の隆起を避けると岩陰より、『ジャーン』と呼ばれるあの小柄な男が現れ、魔術を放つ。
「なっ!」
『ザバッ!』
見えざる突風の刃が金田の身体を裂き、26のダメージを彼に当てる。
金田が反撃のため、ジャーンに近づくとそれはすぐに空中に浮かび上がり、岩陰の中に入る。
「クソッ! 地形利用かッ!」
そう、金田が叫んだ矢先、岩に阻まれ、通路のようになっている金田の前に、その岩間を埋めてしまう巨躯を持つ、オロチが現れ、彼を睨んだ!
「くッ……!」
(続く)
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